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『帰り花の夜に』~義母の静謐なる背徳
第8章 義息~超えてはいけない境界線(7)
約束した通りの曲がり角で、彼の銀色のフォルクスワーゲンに滑り込む。密閉されたドアが重い音を立てて閉まった瞬間、いつものように冷たい小さな針のような罪悪感が胸の奥を突いたが、私はそれらを丁寧にアイロンをかけ、意識のいちばん深い引き出しの奥へ押し込んだ。
「髪、短くしたんですね」と彼はクラッチを踏み込み、シフトレバーを滑らせながら言った。
「とてもよく似合っています。素敵ですよ」
「短すぎないかしら? 首のあたりが妙にスースーして、なんだか裸で歩いているみたいで落ち着かないの。……仕事、本当に抜け出して大丈夫だったの?」
「ええ。午前中に片付けるべき書類はすべて処理しました。誰にも迷惑はかかりませんから、気にしないでください」
車は海岸沿いのバイパスへと滑り出した。大阪の過密な街並みとは違い、この街では海がまるで大きな湿った壁のように日常のすぐ隣に張り付いている。八月の強い日差しを浴びた鉛色の水面が、粉々に砕けた鏡の破片のように乱反射し、助手席の私の頬を無表情に照らし出した。
ふと、彼の左手が私の膝の上に滑り落ちてきた。その指先は迷うことなく、リネンのスカートの裾をゆっくりとたくし上げ、薄い黒のストッキングに包まれた太腿の内側へと侵入していく。皮膚のいちばん薄く、神経が集まった場所で指が止まる。
「もっと触ってもいいのよ」
私は小さく息を漏らしながら、両膝の間隔を数センチメートルほど広げた。彼の人差し指と中指が、ストッキングの股布の補強された厚い織り目を、外側からなぞる。心臓がアイドリングを上げたエンジンのように不規則な脈動を刻み始め、身体の奥深くにある重い錨のようなものが、静かに解かれていくのを感じた。
車はバイパス沿いの、現実から切り離されたモーテル街へ入り、私たちは木々に隠れた目立たない一軒の駐車場へと滑り込んだ。真昼の陽光の下だというのに、そこには幾台ものセダンが無言で息を潜めるように並んでいた。
305号室の重い遮音ドアを開けると、微かな煙草の古い残留物と、均一に過冷却されたエアコンの人工的な空気が私たちを迎えた。窓のない部屋特有の、潜水艦の底のような絶対的な静寂が支配していた。
「髪、短くしたんですね」と彼はクラッチを踏み込み、シフトレバーを滑らせながら言った。
「とてもよく似合っています。素敵ですよ」
「短すぎないかしら? 首のあたりが妙にスースーして、なんだか裸で歩いているみたいで落ち着かないの。……仕事、本当に抜け出して大丈夫だったの?」
「ええ。午前中に片付けるべき書類はすべて処理しました。誰にも迷惑はかかりませんから、気にしないでください」
車は海岸沿いのバイパスへと滑り出した。大阪の過密な街並みとは違い、この街では海がまるで大きな湿った壁のように日常のすぐ隣に張り付いている。八月の強い日差しを浴びた鉛色の水面が、粉々に砕けた鏡の破片のように乱反射し、助手席の私の頬を無表情に照らし出した。
ふと、彼の左手が私の膝の上に滑り落ちてきた。その指先は迷うことなく、リネンのスカートの裾をゆっくりとたくし上げ、薄い黒のストッキングに包まれた太腿の内側へと侵入していく。皮膚のいちばん薄く、神経が集まった場所で指が止まる。
「もっと触ってもいいのよ」
私は小さく息を漏らしながら、両膝の間隔を数センチメートルほど広げた。彼の人差し指と中指が、ストッキングの股布の補強された厚い織り目を、外側からなぞる。心臓がアイドリングを上げたエンジンのように不規則な脈動を刻み始め、身体の奥深くにある重い錨のようなものが、静かに解かれていくのを感じた。
車はバイパス沿いの、現実から切り離されたモーテル街へ入り、私たちは木々に隠れた目立たない一軒の駐車場へと滑り込んだ。真昼の陽光の下だというのに、そこには幾台ものセダンが無言で息を潜めるように並んでいた。
305号室の重い遮音ドアを開けると、微かな煙草の古い残留物と、均一に過冷却されたエアコンの人工的な空気が私たちを迎えた。窓のない部屋特有の、潜水艦の底のような絶対的な静寂が支配していた。

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