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『帰り花の夜に』~義母の静謐なる背徳
第8章 義息~超えてはいけない境界線(7)
人間が何かに慣れていくプロセスというのは、ある意味では恐ろしいものです。どれほど奇妙で、どれほど社会の道徳的枠組みから外れた行為であっても、一定の周期で反復されるうちに、それはまるで古い革靴が足の形に馴染んでいくように、日常の滑らかな皮膚の下へと音もなく潜り込んでしまう。

ある火曜日の午後、私は彼にこう告げた。

「葉月たちが眠っているあいだに、薄暗い部屋で息を殺してセックスするのは、もうやめにしましょう。そんな不要な負荷を自分たちにかける必要なんて、どこにもないんだから」

もちろん、自分の犯している罪の重さや、その輪郭を忘れてしまったわけではない。けれど、一度それなりの傾斜がついた坂道を転がり始めたボウリングの球を、途中で素手で受け止めることなど誰にもできないのだ。

声を押し殺し、肺の中の酸素を節約しながら身体を重ねる息苦しさは、もはや私にとって無駄な摩擦でしかなかった。いまの私たちには、娘の不在という完全で透明な空白の中で、誰の視線にも怯えることなく互いの輪郭を確かめ合う時間があった。

今日も葉月は子供たちを連れ、郊外のママ友の家へと出かけていった。

「夕飯は向こうで適当に済ませてくるから、亮介と二人で冷凍のパスタでも食べておいてね。帰りは迎えに来てって伝えて」

そう言い残し、彼女はキャンバス地の大きなトートバッグを肩にかけ、初夏の風のように晴れやかな顔で玄関のドアを閉めた。

残された静寂の中で、私は部屋の掃除機をかけ、規則正しく洗濯物を畳んだ。手のひらにすっぽりと収まる赤ん坊の小さなパイル地の靴下を見つめていると、胸の奥がきゅっと小さく痛んだ。それは純粋な愛おしさと、決して洗い落とすことのできない罪の意識が等量ずつ混ざり合った痛みだった。けれど、その感傷も古いレコードの最後の溝のように、長くは続かない。

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