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『帰り花の夜に』~義母の静謐なる背徳
第8章 義息~超えてはいけない境界線(7)
夕暮れ時、鍵穴に金属が滑り込み、シリンダーが回る乾いた硬質な音がした。

「ただいま戻りました」

「お帰りなさい、亮介くん」

「葉月は、もう出かけましたか?」

「ええ、とても楽しそうに出ていったわよ。夕飯も向こうで済ませるって。帰りは駅まで迎えに来てほしいそうよ」

「僕のスマートフォンにもメッセージが入っていました。迎えのコールが鳴るまで、僕たち二人きりですね……外はひどく蒸し暑いですよ。まるで温室の中に放り込まれたみたいだ。先にシャワーを浴びてもいいですか? お義母さんも一緒にどうです?」

「先にどうぞ。私はあとで軽く汗を流すから」

私は厚手の遮光カーテンを引き、外の世界の光を遮断して、部屋を深海のような青い薄闇で満たした。壁のエアコンのスイッチを入れ、冷風が床を這うのを確認してから、リビングのフローリングの上に新しく買った厚手の低反発マットを広げた。

腰に白いタオルを巻いた彼が、浴室から立ち上る湯気とともに現れた。二十代の半ば特有の、余分な肉の一片も見当たらない引き締まった肢体。彼は冷蔵庫から取り出したスポーツドリンクのペットボトルを傾け、喉仏を上下させながら無言で飲み干した。

入れ替わりに私が浴室へ向かい、ぬるめのシャワーで肌にまとわりついた微かな汗を洗い流した。バスタオルを胸元にきつく巻き付け、リビングへと戻る。

太腿の半分が露わになった格好のまま、私も冷蔵庫に残された冷たいボトルに口をつけた。冷えた液体が一筋、口の端から零れ落ち、鎖骨のくぼみを伝って胸の谷間へと細い銀の線を引いて滑り落ちていく。

それを見つめていた彼の瞳の奥に、ふっと気圧が急激に下がったような暗い熱が宿った。

「お義母さん、そこ……濡れてますよ」

乾いてかすれた声とともに、彼の手がためらいもなく私の肩へと伸びてきた。パイル地のタオル越しに柔らかな胸の丸みを包み込まれ、指先でツーッと雫の軌跡をなぞり落とされる。ただそれだけのことで、私の太腿の内側の皮膚がきゅんと引き攣れるように熱を帯びた。

「まあ……そんなところまで、目ざといのね」
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