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『帰り花の夜に』~義母の静謐なる背徳
第2章 義息~超えてはいけない境界線(1)
「朝食くらい言ってくれれば、何か作ったのに。先に済ませちゃったのね」
僕——いや、私の声は、冬の朝の澄んだ空気にわずかに溶けて消えた。
「いいの、いいの。それよりママこそ、まだベッドの中にいればよかったのに。年末くらいは目覚まし時計の存在を忘れたって、誰も文句は言わないわ」
娘の葉月は、どこか完璧に調律されたチェロのような声でそう言った。
「ありがとう。それで……今日はどうするつもり?」
「亮介と神社に行こうって話になってるの」
「あの大きな神社まで?」
「ううん、あっちじゃなくて護国神社。まずは地元の氏神様に、今年も無事に戻ってきましたって挨拶しなくちゃね」
冬の朝といえば、まるで古いトレンチコートにくるまったミノムシのようにベッドから出てこない長女にしては、ずいぶんと活動的な滑り出しだった。私はやれやれと心の中で小さく肩をすくめ、キッチンのリノリウムの床を踏みしめながら、年越しの重箱を並べにかかった。
娘と亮介くんが連れ立って玄関のドアを閉め、冷気とともに静寂が戻ってきたあと、私は寝室のノブに手をかけた。二度、控えめにノックする。返事はない。
「まだ寝てるの、あなた」
返ってきたのは、古いスプリングが軋むような曖昧な唸り声だけだった。新年を迎えた挨拶を交わすのが筋というものかもしれないけれど、世の中には言葉よりも直接的なやり取りを必要とする瞬間がある。
私は滑り込むように、彼が被っている羽毛布団の闇の中へと潜り込んだ。
布団の内部は、男の放つ濃厚な体温と湿った夜の名残で満たされていた。もわっとした重苦しい熱気が肌を撫で、私の額にひとすじの汗が滲み出る。
下着のゴムに指を掛け、ためらいなく滑り落ちさせると、そこには無防備な雄の証が横たわっていた。口内に集めた潤滑な唾液を含み、息を殺してその先端へと唇を寄せる。
微かな吐息とともに、熱い粘膜をそっと吸い上げた。指先で根元から亀頭のくびれへと這わせる繊細な愛撫に、男は低く喉を鳴らして身震いする。眠りの淵にあった肉の塊が、じわりと血流を満たし、確かな硬度と質量を帯びて反り立っていく。
「……ん、朝から何の真似だ?」
微睡みの残る瞳を擦りながら、夫は困惑と快楽の入り混じった掠れ声を出した。
「もう朝よ。早く目を覚まして」
僕——いや、私の声は、冬の朝の澄んだ空気にわずかに溶けて消えた。
「いいの、いいの。それよりママこそ、まだベッドの中にいればよかったのに。年末くらいは目覚まし時計の存在を忘れたって、誰も文句は言わないわ」
娘の葉月は、どこか完璧に調律されたチェロのような声でそう言った。
「ありがとう。それで……今日はどうするつもり?」
「亮介と神社に行こうって話になってるの」
「あの大きな神社まで?」
「ううん、あっちじゃなくて護国神社。まずは地元の氏神様に、今年も無事に戻ってきましたって挨拶しなくちゃね」
冬の朝といえば、まるで古いトレンチコートにくるまったミノムシのようにベッドから出てこない長女にしては、ずいぶんと活動的な滑り出しだった。私はやれやれと心の中で小さく肩をすくめ、キッチンのリノリウムの床を踏みしめながら、年越しの重箱を並べにかかった。
娘と亮介くんが連れ立って玄関のドアを閉め、冷気とともに静寂が戻ってきたあと、私は寝室のノブに手をかけた。二度、控えめにノックする。返事はない。
「まだ寝てるの、あなた」
返ってきたのは、古いスプリングが軋むような曖昧な唸り声だけだった。新年を迎えた挨拶を交わすのが筋というものかもしれないけれど、世の中には言葉よりも直接的なやり取りを必要とする瞬間がある。
私は滑り込むように、彼が被っている羽毛布団の闇の中へと潜り込んだ。
布団の内部は、男の放つ濃厚な体温と湿った夜の名残で満たされていた。もわっとした重苦しい熱気が肌を撫で、私の額にひとすじの汗が滲み出る。
下着のゴムに指を掛け、ためらいなく滑り落ちさせると、そこには無防備な雄の証が横たわっていた。口内に集めた潤滑な唾液を含み、息を殺してその先端へと唇を寄せる。
微かな吐息とともに、熱い粘膜をそっと吸い上げた。指先で根元から亀頭のくびれへと這わせる繊細な愛撫に、男は低く喉を鳴らして身震いする。眠りの淵にあった肉の塊が、じわりと血流を満たし、確かな硬度と質量を帯びて反り立っていく。
「……ん、朝から何の真似だ?」
微睡みの残る瞳を擦りながら、夫は困惑と快楽の入り混じった掠れ声を出した。
「もう朝よ。早く目を覚まして」

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