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『帰り花の夜に』~義母の静謐なる背徳
第6章 義息~超えてはいけない境界線(5)
深夜、肩をとんとんと叩かれて目が覚めた。リビングのソファの上だった。
「亮介君、どうしたの?」
「起こしてくれって言われたので。葉月も雫もぐっすり寝てますよ」
「そうだったわね。……ええとね、まず明日の朝、散歩に付き合ってほしいの。運動不足だから。葉月には話してあるわ」
彼は黙って頷いた。
「それから、とても大事な話。半年間の予定だったけれど、来月には大阪へ帰ることにするわ」
「お義父さんのことですか」
「ええ。やっぱり寂しいみたいだし、家の中がひどいことになっているらしいの。それにね、亮介君との関係についても話しておきたいの」
彼はごくりと喉を鳴らした。
「あなたが葉月と別れない限り、私たちはこれからも親戚として顔を合わせ続ける。だからこそ、この関係に永遠なんてものを期待してはいけないの。私は自分で納得してこの関係を持ったし、あなたを一人の男としても好きになった。でも、不倫というものは薄いガラス細工みたいなものよ。針一本で簡単に割れてしまう」
彼は視線を落としたまま聞いていた。
「葉月だって、育児が落ち着けばまた元の夫婦に戻るわ。こういう関係の熱気って、ある種の酔いのようなものなの。時間が経てば必ず覚める。だから、深く考えすぎないでね」
「……はい。お義母さんの言いたいことは、よく分かりました。おやすみなさい」
沈んだ彼の背中を見ていると、胸のどこかが痛んだ。
「明日の朝の散歩はやっぱりやめましょう。勝手なことばかり言ってごめんなさい。最後に……」
私が唇を差し出すと、彼は近づいてきて、静かに唇を重ねた。
不倫という行為には、必ず何らかの代償が伴う。完全に無傷のままで通り抜けられる人間なんて、この世界のどこにも存在しない。
彼との情事は、その夜を最後に終わった。彼が二人きりになろうと映画やドライブに誘ってくることもあったが、私は適当な理由をつけてすべて断った。その代わり、休みの前夜にはソファに並んで腰掛け、レンタルした映画を観たり、彼が買ってきた話題の本を回し読みして感想を語り合ったりした。それはそれで、穏やかで心地よい時間だった。
「亮介君、どうしたの?」
「起こしてくれって言われたので。葉月も雫もぐっすり寝てますよ」
「そうだったわね。……ええとね、まず明日の朝、散歩に付き合ってほしいの。運動不足だから。葉月には話してあるわ」
彼は黙って頷いた。
「それから、とても大事な話。半年間の予定だったけれど、来月には大阪へ帰ることにするわ」
「お義父さんのことですか」
「ええ。やっぱり寂しいみたいだし、家の中がひどいことになっているらしいの。それにね、亮介君との関係についても話しておきたいの」
彼はごくりと喉を鳴らした。
「あなたが葉月と別れない限り、私たちはこれからも親戚として顔を合わせ続ける。だからこそ、この関係に永遠なんてものを期待してはいけないの。私は自分で納得してこの関係を持ったし、あなたを一人の男としても好きになった。でも、不倫というものは薄いガラス細工みたいなものよ。針一本で簡単に割れてしまう」
彼は視線を落としたまま聞いていた。
「葉月だって、育児が落ち着けばまた元の夫婦に戻るわ。こういう関係の熱気って、ある種の酔いのようなものなの。時間が経てば必ず覚める。だから、深く考えすぎないでね」
「……はい。お義母さんの言いたいことは、よく分かりました。おやすみなさい」
沈んだ彼の背中を見ていると、胸のどこかが痛んだ。
「明日の朝の散歩はやっぱりやめましょう。勝手なことばかり言ってごめんなさい。最後に……」
私が唇を差し出すと、彼は近づいてきて、静かに唇を重ねた。
不倫という行為には、必ず何らかの代償が伴う。完全に無傷のままで通り抜けられる人間なんて、この世界のどこにも存在しない。
彼との情事は、その夜を最後に終わった。彼が二人きりになろうと映画やドライブに誘ってくることもあったが、私は適当な理由をつけてすべて断った。その代わり、休みの前夜にはソファに並んで腰掛け、レンタルした映画を観たり、彼が買ってきた話題の本を回し読みして感想を語り合ったりした。それはそれで、穏やかで心地よい時間だった。

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