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『帰り花の夜に』~義母の静謐なる背徳
第2章 義息~超えてはいけない境界線(1)
夜の帳が降り始める十二月三十日の夕刻、自宅のインターホンが鳴った。門扉を開け、玄関のドアを開ける。
「ただいま~、ママ」
元気な声が、鼓膜を少し強めに震わせた。
「おかえりなさい。亮介くんも久しぶりね」
「お久しぶりです。お義母さんも、皆さんもお元気でしたか?」
「元気にしてるわよ。樹ももう帰ってきてるわ。さあ、あがって」
「おじゃましま~す、って変かな。ああ、やっぱ実家っていいわね。空気がちょっと違うんですよ」
長女がパートナーの亮介君とともにやって来た。彼と顔を合わせるのは、結婚式とゴールデンウィーク、そして今回で三回目だった。
彼はスラッと背が高く、瓜実顔のすっとした、いわゆる醤油顔をしている。イケメンというほどではないが、私の好みの顔だ。長女の相手としてはお似合いだし、二人が並んでいる姿を見ると、どちらも幸せそうで、ほっとするのと同時に、どこか初々しくて微笑ましく感じる。
玄関での挨拶もほどほどに済ませると、長女はブーツを脱いで駆け出し、愛犬をケージから抱き出して、ベルベットのような耳を触ったり、頬ずりを始めた。久しぶりの飼い主に、愛犬も尻尾がちぎれそうな勢いで喜んでいる。
「ねえ、まずは二人の荷物ぐらい部屋に置いてきたら……すみません、葉月ったら家に帰ると、いつもこうなんですよ」
「いえいえ、いいんですよ。帰る途中、ずっと犬の話ばかりしてましたから。会いたくて仕方なかったんでしょう」と、彼はかぶりを振りながら言った。
「葉月ね、独身時代は何かにかこつけて、本当によく帰ってきてたの。今は前みたいにちょくちょくは来られなくなったから……のんちゃんのこと、可愛いんでしょうね」
「そうだ、お義母さん、これお土産です。甘いものがお好きだと聞いて、近所の有名店でロールケーキを買ってきました」
「お義母さん」という響きには、まだ少し慣れない。何だか照れ臭くなる。
「ところで、昼ごはんは食べてきたの?」
「ピザトースト。でももうお腹すいちゃいました。ママ、何か軽食でもある?」
「そういうと思ったわ。ちゃんと用意してあるから。さあ、おいで」
「ピザトーストって、何か寂しげな響きですね」と亮介君が言った。「まるで、一人暮らしの象徴みたいで」
「まあ、実家に帰る前の最後の食事としては、なかなか風情があるんじゃない?」と私は笑いながら答えた。
「ただいま~、ママ」
元気な声が、鼓膜を少し強めに震わせた。
「おかえりなさい。亮介くんも久しぶりね」
「お久しぶりです。お義母さんも、皆さんもお元気でしたか?」
「元気にしてるわよ。樹ももう帰ってきてるわ。さあ、あがって」
「おじゃましま~す、って変かな。ああ、やっぱ実家っていいわね。空気がちょっと違うんですよ」
長女がパートナーの亮介君とともにやって来た。彼と顔を合わせるのは、結婚式とゴールデンウィーク、そして今回で三回目だった。
彼はスラッと背が高く、瓜実顔のすっとした、いわゆる醤油顔をしている。イケメンというほどではないが、私の好みの顔だ。長女の相手としてはお似合いだし、二人が並んでいる姿を見ると、どちらも幸せそうで、ほっとするのと同時に、どこか初々しくて微笑ましく感じる。
玄関での挨拶もほどほどに済ませると、長女はブーツを脱いで駆け出し、愛犬をケージから抱き出して、ベルベットのような耳を触ったり、頬ずりを始めた。久しぶりの飼い主に、愛犬も尻尾がちぎれそうな勢いで喜んでいる。
「ねえ、まずは二人の荷物ぐらい部屋に置いてきたら……すみません、葉月ったら家に帰ると、いつもこうなんですよ」
「いえいえ、いいんですよ。帰る途中、ずっと犬の話ばかりしてましたから。会いたくて仕方なかったんでしょう」と、彼はかぶりを振りながら言った。
「葉月ね、独身時代は何かにかこつけて、本当によく帰ってきてたの。今は前みたいにちょくちょくは来られなくなったから……のんちゃんのこと、可愛いんでしょうね」
「そうだ、お義母さん、これお土産です。甘いものがお好きだと聞いて、近所の有名店でロールケーキを買ってきました」
「お義母さん」という響きには、まだ少し慣れない。何だか照れ臭くなる。
「ところで、昼ごはんは食べてきたの?」
「ピザトースト。でももうお腹すいちゃいました。ママ、何か軽食でもある?」
「そういうと思ったわ。ちゃんと用意してあるから。さあ、おいで」
「ピザトーストって、何か寂しげな響きですね」と亮介君が言った。「まるで、一人暮らしの象徴みたいで」
「まあ、実家に帰る前の最後の食事としては、なかなか風情があるんじゃない?」と私は笑いながら答えた。

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