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彼と私の10コの差
第1章 彼と私の10コの差
「お疲れさまでーす」

時間差で先に店を出た。
心臓が半端なくドキドキしてる。
何年ぶりだろう、こんなドキドキするの。
ってか私のキャラじゃないし!

そう思って冷静でいようとするものの、頭の中は真っ白だった。
期待しちゃだめだ、って分かってるのに期待せずにはいられない。

「あ、山本さーん。お疲れさまですぅー」

新人の田中さんがぷりぷり腰を振りながら通りすぎる。
ここまで徹底してるとむしろ可愛く見えるな。

「あ、そうだぁ、さっきー、伊藤くんに会ったんですけどぉ」

伊藤くん。
名前を聞いただけで心臓が跳ね上がる。
私、相当重症だ。

「いきなりー、メアド聞かれたんですよー。これってー私に気があるってことなんですかねぇー?」

「え、メアド?」

「私的にはぁー、伊藤くんは好みじゃないっていうかぁ、できれば鈴木くんの方がぁ」

メアド?
……1年一緒に働いてるけど私伊藤くんのメアド知らない。

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