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ほしいままに
第21章 俺は本当の君を知りたい(後藤将行)
父親の目をかいくぐって俺に必死なサインを送っている、そんな感じだった。
俺は直感的に森川澪奈に調子を合わせた方がいいと感じ、慌ててうなずいた。
「キャスター付きの椅子を台にした・・・のは、確かに危険だからもうやめて欲しいですね。でも、怪我が軽くてよかったです。労災の手続きは、私が進めますから、森川さんはゆっくり休んでしっかり回復してください」
俺は一息で言うと、森川宗太郎にプリンの箱を丁重に差し出して挨拶し、病室をあとにした。
照明が落ちた待合室を抜けて裏の救急用出入り口から外に出た。
昨日の夜、森川澪奈が転んで頭を打ったのは、香宗我部優ともみあいになったからだ。
事実、香宗我部は彼女と言い合いになり、感情的になって手首をつかんだと言っていた。
だが、森川澪奈は全く違うことを父親の前で言ったのだった。
さらに彼女は、有無を言わせぬ勢いの目配せで、俺に口裏を合わせるよう促し、父親を欺いた。
森川澪奈はなぜ、本当のことを父親に言わなかったのか。
おそらく、この件で加害者になる可能性のある香宗我部優を、擁護するためか。
しかし俺には、それだけが理由ではないように思えた。
あの父親は、同期の異性と揉めたなどと知ったら、猛烈に怒るタイプなのかもしれない。
俺は澪奈の本心を確かめたくて、病院から離れられなかった。

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