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ほしいままに
第26章 包容
地方の丘の上の公園内にある、小さな遊園地。
観覧車の背後に、オレンジ色の夕暮れが広がっていた。
平日の閉園時刻直前だけに、ほとんど人気がなく、乗り物の鉄がきしむ音と、巣に帰っていく鳥の鳴き声がときおり聞こえるだけだ。
「さっき支店長が私をおぶってくれたとき、ここでパパにおんぶしてもらったのを思い出したんです」
澪奈は言って、大きく息を吸い込んだ。
「パパって言うのは、あのお父さんではなくて、実の父親です」
「あの、森川宗太郎という人は、父親ではないのか」
俺は驚きのあまり、澪奈の言葉に被せるように返した。
「あの人は、パパの、お兄さん。本当は叔父なんです。両親が事故に遭って急死したとき、叔父にひきとられました」
俺は小さい頃に叔父と二人だけになった澪奈を思った。
頼りにできる唯一の大人が、叔父である森川宗太郎だった。おそらく宗太郎は、澪奈の生命を掌握する完全な支配者であったのだろう。彼の言うことは澪奈にとって絶対だった。従わなければ、澪奈に生きる道はなかったのだ。
そしてその、唯一頼るべき存在の叔父こそが、自分の体を蹂躙する悪魔だった。しかも、澪奈に他の女性の存在を重ねて、その体を弄んだ。
そのことを澪奈は、どう受け止めて来たのか。
なぜ、これまで拒まず、逃げずにいたのか。
澪奈が背負ってきたあまりに重く残酷な運命を思い、胸がつぶれる。
が、澪奈はゆっくりと回転する観覧車を、穏やかな目で眺めている。
辛い過去を語りながらも、澪奈は今幸福な思い出の中にいるようだった。幸福な記憶になんとかしがみつき、辛い思い出に呑み込まれないよう、心の裡では必死に戦っているのかもしれなかった。

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