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ほしいままに
第31章 半年ののち
「あーもったいない」
私は手を伸ばしてそのエビを拾おうとして、誰かの靴先に指が当たってしまった。
見上げると、背の高い男性が立っていた。
彼は私を見下ろして微笑んだ。
「相席、いいですか」
「ええ、どうぞ」
テキストを入れたリュックを足元に置きなおし、向かい側の椅子を空けた。
日菜子ママが注文に来ると、男性はホットのカフェラテを注文した。
私はうつむいて、心臓が高鳴るのを抑えて深呼吸をした。
何をどう話しかけようか、頭の中でいろいろな言葉がぐるぐる駆け巡った。
そして、この瞬間を何度も想像して準備していた言葉を、胸の奥からそっと取り出すように、口にした。
「あの…どこかで会ったことは」
男性はテーブルに手をのせた。中央に置かれていたランタンの灯りの中に、彼の顔が優しく浮かび上がった。
後藤将行の顔が、そこにある。

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