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ほしいままに
第31章 半年ののち
「あなたのことをよく知っているような気がする。でも、会ったのは初めてだよ」
久しぶりに聞いた彼の声が、胸の温度を一気に上げた。
まるでお湯が沸くみたいに、私の中の感情が煮え立って熱くなり、涙になって内側からこぼれ出た。
彼は、私の願いをかなえてくれたのだ。
一夜を共にして、その日の朝にそっと部屋を抜け出したのが半年前。私は彼が眠っている横で、一枚のメモを書き残しておいた。
『六か月後の夜、あの橋が見下ろせる、川沿いのビル二階にあるカフェで待っています。まるで初めて会うように、そこで再会したいのです』
あのメッセージを、彼はずっと忘れずにここまで来てくれたのだ。
この半年の間に私が選んだことやしてきたことを、順を追って話した。
保育士を目指して専門学校に通っていること、土日は飲食店のアルバイトを掛け持ちしていること。
他にも彼に伝えたいことは数えきれないほどあった。
それは、あの時語ることができなくて、ずっと胸の中にしまっておいた想いたち。
彼も、身の回りのことを話してくれた。
一度会社を辞め、別の不動産会社に再就職してマネジメントをしていること。長年かけていた離婚調停が成立し、一人暮らしにも慣れ、料理が上達したこと。
そして、この半年間、ずっと一人でいたこと。

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