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人妻コレクション~他人に抱かれる妻たち
第10章 菜々姫~囚われた戦国の美妻
日中は人目を避けつつ山野を駆け、休息を取った。

そして、闇に溶け込むことが許される夜、菜々は国境を懸命に目指した。

休息の度、甚八は水、そして食料をどこからか調達してきた。

「甚八、すまぬな」

相変わらず甚八の口数は少ない。

その態度だけで、彼は主の正室である菜々への忠節を表現した。

筋肉質に鍛えられたしもべの肉体が、ぼろい布きれの下に見える。

菜々は、極力視線を避けつつも、その逞しい体に安堵を感じていた。

そして、数日が過ぎ去った。

城を出てから何度目かの日が沈み、再び夜が訪れようとしている。

険しい崖を這うような細い道に二人はいた。

「奥方様、あれを」

前方を早足で進んでいた甚八が、今しがた日が沈んだあたりを示した。

小さな集落らしい景色が遥か前方に見える。

「あれは・・・・」

「我が藤川の国の果てでございまする」

「すると、我らが目指す隣国は・・・・」

「あの集落の先に峠がございます。殿と奥方様を迎え入れる場所は、その峠の向こう側でございます」

「さようか・・・・」

菜々はここまでどうにか無事にたどり着いたことに、深い感慨を得た。

だが、一つの不安がある。

「勝重様は・・・・、いや、殿はいったい・・・・」

「恐らくは既に国越えを果たされているかと」

「あの向こう側に殿が・・・・・」

菜々は見つめた。

日が沈み、赤々と染まった空の彼方を。

そこに、愛する夫が待っているのだ。

我が藤川家の世継ぎを作り、再興を図るために。

「殿・・・・・、はよう会いとうございまする・・・・・・」

涙を流す菜々を、しかし、甚八は非礼に見つめることはなかった。

視線を落としたまま、彼は静かに言った。

「参りましょう、奥方様」

「甚八・・・・」

「この甚八、必ずや奥方様を殿のもとに連れて参りまする」

それは、甚八には珍しく、強い物言いだった。

大丈夫だ。

この男がいる限り、わらわは無事に勝重様のもとに・・・・。

再び、二人は歩み始めた。

道はやがて山林に入り、木の根を越えながら、菜々は前進を続けた。

どこかでフクロウのような鳥が不吉に鳴いている。

ハアハアハア・・・・

先に行く甚八の背中を、菜々は懸命に追った。

その時だった。

頭上から何かが菜々を襲った。
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