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人妻コレクション~他人に抱かれる妻たち
第10章 菜々姫~囚われた戦国の美妻
「うっ・・・・」

何が起こったのか、菜々には理解できなかった。

闇の中、大木の根に足をとられたかと思ったが、そうではなかった。

深い森の中で転倒した菜々は、肢体を動かし、立ち上がろうとした。

だがもがけばもがくほど、何かが全身に絡んでくる。

巨大な網が菜々を覆っているのだ。

「甚八・・・・、甚八!・・・・・」

狂ったように菜々はしもべに助けを求めた。

随分と先に彼は進んでいた。

だが、この静寂の中であれば、必ずや声は届くはず。

「甚八!・・・・・」

腕に、そして、胴にその網がどんどんと絡んでくる。

「ううっ、動けぬ・・・・」

激しい焦りと恐怖を感じ、菜々は思わず胸に隠した十字をおさえた。

「ふふっ、神は助けてはくれぬわ」

網の中に拘束された菜々のすぐ横で声が聞こえた。

「な、何者じゃ!」

菜々は気丈に叫んだ。

「奥方様、随分探しましたぜ」

覚えのない声に続き、男どもの笑い声が聞こえた。

地の底から湧きあがる不気味な笑い声。

それは、相当な数の男どもが菜々の付近に集まってきたことを伝えていた。

「心強い用心棒はどこじゃ」

網の中でうずくまったまま、菜々は息を潜めた。

甚八・・・・・

だが、闇の中、菜々を囲む獣たちの数は、絶望的なものだった。

「おい、どこにおるか!!」

一人の男が、闇に向かって声をあげた。

「木の上か! はたまた、地の下か!」

静寂だけが後に続く。

男の手が、菜々に伸びる。

「立つんじゃ」

菜々は、網に絡められた無残な姿で、強引に立たされた。

その胸元に、短刀の光る刃があてられた。

「奥方様を殺めるぞ!」

菜々は感じた。

静寂の中、甚八がこの男の挑発を密かに聞いていることを。

菜々はとっさに叫んだ。

「わらわのことは気にするでない! 先を進むのじゃ! この顛末を皆に伝えるのじゃ!」

もはやこれまでか、と菜々は感じていた。

獣たちにこの体を汚されるくらいなら、潔く死を選ぶのみ。

この最後を、甚八には彼に伝えてもらいたい。

勝重様に・・・・・

「行くのじゃ! 構わず行け!」

菜々は再度、叫んだ。

刃の先端が、菜々の盛り上がった胸元を圧していく。

菜々は、瞳を閉じた。

そのとき。

「待て!」

闇の中から、甚八の声が聞こえた。
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