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梨華との秘密
第6章 支社長の女
 名残を惜しむように身体を放した。
 美澤恵理加が車に乗るのをまった。


「さあ、次に行こうか?」


 車をスタートさせながら言うと、


「えぇ、次はあの、お店でしょ?」


 美澤恵理加かが口ごもりながら聞いてきた。


「うん、アダルトショップ。君のためでもあるんだよ、美澤くん。高原君は意味はわかるよね?」


 朱里が、どうしようかと言う風に、


「えっ?もう、松川さんたら。わかりますわ、彼とのためね。」


 そう言いながら、俺にウィンクした朱里のその目は、微笑んでいた。


「あの、係長、私のためって?なんでしょう?」


 少しトゲのとれた感じで、美澤恵理加が聞いてきた。


「うん、美澤くんの彼氏、転勤したら君に視野を広げて貰おうと思ってね。彼氏が最初の男だろ?違ってたらごめんな。」


 うそっと、恵理加の唇が動くのがルームミラーに映った。


「松川係長は、お見通しなんですね。そうです、彼が最初です。でも、どうして分かったんですか?」


 意外に素直やな?
 気を付けよ。
 後が怖いでぇ!


「まっ、なんとなくさ。それと、経験だよ。もう少しやな。」


「えっ、ホントね。見えてきたわね。」


 朱里が同意するように言った。


「係長、経験ですか?そうなんですね。でも、私、支社長に本気だったんです。でも、、。」


 恵理加の声が途中で止まった。


「美澤くん、大丈夫かい?」


 我ながら間抜けな質問をしていた。
 朱里が目で俺を制して、ユックリ後ろをのぞくように、恵理加の様子を見ていた。


「美澤さん、無責任な男のために泣いちゃだめよ。松川さんも私もいるからね。あなたは美人なんだから、そんなやつのために泣くなんてもったいないわよ。」


 同意を求めるように、朱里が俺を見ていた。


「その通りだよ、美澤くん。まっ、俺じゃ君の趣味じゃないだろうけど、なにかあれば相談にのるよ。」


 朱里と二人で慰めていると、アダルトショップの駐車場についていた。


「ありがとうございます。高原さんも係長も、心配して下さって。私、大丈夫です。」


 少し吹っ切れたような感じで恵理加が健気に言った。


「うん、それで安心したよ。なにかあったら、ないと思うけどね。話しにおいで。」
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