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梨華との秘密
第6章 支社長の女
 イタズラっぽい微笑みを浮かべながら、


「お待たせ、松川さん、美澤さん。次に行きましょうか。あら、美澤さん、大丈夫なの?顔色悪いわ。」


 朱里が、全てを知り尽くした悪魔の一言を恵理加にぶつけた。


「えっ、いえ、大丈夫です。あの高原さん、松川係長ってどんな人なんですか?」


 辛うじて朱里の攻撃をかわした恵理加が聞いた。


「ふふふ、頼りになる上司。ていうより、どSよね。普段から、松川さんから変なことされなかった、美澤さん?」


 最後の一言で、恵理加の身体を羞恥が包んだ。


「えっ、いえっ、大丈夫でしたよ。」


 ごまかすように取り繕ったが、俺が見ても動揺しているのは隠せなかった。
 しかし、次のコーナーに入ると、朱里は目が輝き、恵理加は驚きと嫌悪感が混ざった表情を浮かべていた。


「これって、SMのね。」


「うん、みたいだね。ロウソクに鞭、へえ、あんなのもあるんだ。」


 朱里のわざとらしい質問を軽く流しながら答えると、



「つぎ、いきません。」


 恵理加が困ったように言った。


「そうね、次はアダルトビデオね。松川さん、そろそろ帰りませんか?」


 朱里が帰りたそうに、聞いてきた。


「そうだね、時間も丁度みたいだしね。帰ろうか。」


 そう答えると、女二人がうなずいた。
 駐車場へ戻りながら、俺は携帯を取り出し、何気ない風に電話をかけた。


「ん、、やっ、、」


 横を歩いていた恵理加の身体が緊張し、唇を噛んだ。


「どうしたね、美澤さん大丈夫?」


 俺に軽くウィンクして、朱里が恵理加に声をかけた。
 俺がすぐに携帯を切ると、


「いえっ、高原さん、大丈夫です。ん、すみません。初めての経験でしたから、緊張して、、。」


 少し緊張したような顔で、朱里に答えていたが、その目はあきらかに俺をにらんでいた。
 車を岡山に向けスタートさせ、四十分ほど走らせるとホテルに着いた。


「それじゃあ、一日ありがとうございました。結婚式には必ず来てくださいね。」


「あぁ、それじゃ楽しみにしてるよ。常務と社長によろしくね。」


 そう言って朱里がホテルに入っていった。
 車をホテルのロビーの見えないところに止めると、恵理加が車から降り、前に回りこみ助手席に乗り込んできた。
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