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梨華との秘密
第3章 娘って
 俺が迷っていると、三奈が覚悟を決めたように、ゆっくりとしゃべりはじめた。


「梨華、実はママは幸姉さんの住んでるマンションで、初めてパパ、二郎さんを紹介された時から、パパが好きになったの。」


「えっ!それって三角関係?」


 梨華の驚きが、俺には新鮮に思えた。


「ううん、ママの片思いなの。幸姉さんが死んで初めて自分の気持ちが本物だってわかった。押さえようとしたんだけど、だめだったの。」


 俺は、どうしようかと思ったが、梨華の方が早かった。


「つまりぃ、お葬式で気持ちが高ぶっちゃって、パパに告っちゃったの?うそっ、そんな!」


 梨華の中で、事態が飲み込め始めたらしく見えた。


「そうなんだ、パパはママに告られて、パニクっちまったんだ。それで、逃げたんだよ。」


 最後は叫ぶように言っちまったらしい?
 女二人がこちらを驚いたように見ていた。
 その場を誤魔化そうと紅茶をゴクリッと口に含んだとたん、


「うへっ、げほっ、けほっ、」


 吹き出していた。


「パパ、大丈夫?あんまり大きな声出すからよ。もう、気を付けてね。」


 梨華にティッシュペーパーをもらい、失敗したぁって思ってた。


「そう、いま二郎さんが言った通り告ったけど、気持ちは嬉しいけどいまは、幸を見送ってやりたいって。思い出が多すぎて、考えられないって言われたわ。」


 俺の中に幸への思いが甦った。


「それって、ごめんなさいじゃない。でも、本人のお葬式じゃ場所が悪すぎたわねぇ、パパ。」


 いきなり振るなよ。
 しかし、この小悪魔はキラキラとした瞳を俺に向けてきた。


「うん、ママの気持ちを考える余裕なんてなかった。だから、パパは幸を見送ったあと二度と幸のまわりに近づかなかったんだ。辛すぎちゃって。」


「そうね。あなたは、そういう人だったわ。私はわかってたのに自分が止められなかったの、バカよねママは。」


 梨華の両目から大粒の涙があふれた。
 それを見た三奈が娘を抱き締めた。
 彼女の目にも一粒の涙が、あふれ頬を濡らした。


「ううん、パパもママも悪くない。仕方ないよ。二人とも純粋だったんだよ。」


 半分泣きじゃくりながら、梨華が俺たちに、そう言った。
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