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梨華との秘密
第6章 支社長の女
 社内が何となくザワザワしたまま十時が過ぎたころ、課長が俺を手招きした。


「課長、お呼びですか?」


「あぁ、応接室へ行ってくれ。社長秘書がお待ちだ。」


 やれやれだな。
 あれ、美澤恵理加がいないな?


「しかし、課長、美澤さんはキツイですね。」


「うん、少し彼女には大人の遊びを覚えてもらうのもいいかなってね。支社長はまだ、移動のことは彼女に話してないみたいだしな。」


 大人の遊びって、面白いか?
 元恋人と支社長の愛人って、まっ、なんにもない方がふしぎだわな。


「じゃあ、少し危ない方もオッケーですね?」


「ん?あぁ、君の常識の範囲でな。じゃあ、頼むわ。」


 そのまま行きかけて、


「あっ、課長、美澤さんは上ですか?」


「いや、私服に着替えてるよ。」


 あっ、と言いながら手を振って応接室へ向かった。
 応接室に入ると、高原朱里がソファーに座り待っていた。


「久しぶりだね、高原君。婚約おめでとう。」


「ありがとうございます、松川係長。本当にお久しぶりです。きょうは、一日お願いします。」


 俺は久しぶりの高原朱里の全身を値踏みするように見ていた。
 スラッとした長身で、バストはツンと張りのあるFカップ、キュッと締まった腰とクィッと持ち上がったヒップ、思わず三年前を思い出していた。
 朱里と俺に時間の壁が崩れたように、見つめあっていた。
 お互いに近づこうと一歩踏み出した。
 コンコンと、ノックの音が聞こえた。


「あの、企画課長から言われて来たんですが?」


 美澤恵理加の声が聞こえた。


「あっ、はい、どうぞ。」


「お目付け役だよ、彼女は。」


 朱里にだけ聞こえるように言うと、軽くウィンクされた。
 緊張ぎみに美澤恵理加が入ってきた。


「お座りなさいな、美澤さん。松川係長はご存じですよね?」


「あっ、はい。同じ課ですから。」


 美澤恵理加から、日頃の傲慢さが消えていた。


「松川さん、彼女面白いわね。きょう一日楽しみだわ。よろしくお願いします。」


「うん、だいたいのプランは決めてあるからね。三年立っても君の趣味が変わってなければ、たのしめると思うよ、高原君。」


 美澤恵理加がポカンとして、


「あの、お二人はお知り合いなんですか?」
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