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梨華との秘密
第6章 支社長の女
 どう答えようか?
 少し迷ってると、


「えぇ、松川さんは私の指導員だったのよ。仕事を全部教えてもらったわ。大学を出たばっかりで何にも知らなかったから、迷惑ばっかりかけて、ね。」


 ありゃりゃ、先回りされたよ。
 ん?
 美澤恵理加がキョトキョトしてるぞ。
 面白いな。


「うん、まあね。でも、高原君は優秀だったからね。じゃあ、少し予定を話とこうかな?」


「えぇ、お願いします。どこに連れて行って下さるのかしら?」


 ふわっとした感じで、朱里が微笑んだ。
 俺が予定を読み上げると、美澤恵理加が何か言いたそうにイライラしていた。


「面白そうね。行きましょう。」


 朱里が言うと、美澤恵理加のイライラが限界に来たらしい。


「あの、それだけじゃ、あの女性には、モノたりないんじゃ?」


 あらま、女性?
 つまり、自分の意見を聞けってことか?
 面白いな。


「うふっ、美澤さんでしたね。私は松川さんのプランでいいと思いますよ。それとも、他に良いアイデアがありますの?」


 朱里が面白いモノでも見るように、美澤恵理加を見ていた。


「あっ、いえ、高原さんが良いとおっしゃるなら、それで。」


 ふ~ん、失敗したら責任は全部あんたよ、かな?


「じゃ、車持って来ますんで下で待ってて下さい。」


「えぇ、それじゃ、一緒に降りましょう。」


 朱里がうながすように言いながら立ち上がった。
 三人で一階に降り、彼女達を一階ホールに待たせ、駐車場まで急いだ。
 車で彼女達の待つ会社へ戻ったのは十分後だった。


「倉敷までどれくらいで、着くんですか?」


 車に乗り込むと、朱里が聞いてきた。


「う~ん、一時間くらいかな?まっ、渋滞がなければね。」


「え~っ、一時間~?うそでしょう!」


 後ろに座って不満タラタラの感じで、美澤恵理加が俺に言ってきた。


「あれ?美澤さん知らないのかな?地元じゃなかったのかな?」


 さあて、高慢女をイタブッテやるか。
 助手席の朱里の唇が皮肉に微笑んだ。


「えっ、地元って、倉敷じゃないですから。私、岡山ですから!」


 でた!
 岡山市民自慢!
 ふふふ、ツツキがいがあるな。


「あぁ、そうなんだぁ。岡山かぁ、倉敷には来たことないって人が結構いるんだよな。」
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