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梨華との秘密
第6章 支社長の女
 プッと、隣で朱里が吹き出し、


「えっ、そうなんですか?近いから余り行かないのかしら?」


 イタズラッぽく目が笑っていた。


「うん、みたいだよ。それに岡山から見ると、倉敷っていなかだしね。あっ、そうそう、この近くかな?あっ、あれだ。帰りに案内しようと思ってね。」


 俺の指差す方を彼女たちが見た瞬間、後ろからチッと舌打ちの音が聞こえた。
 ふふふ、こいつはチャンスだ。


「えっ、喫茶店?ヘリコプターが屋根に乗ってるの?」


 朱里の驚きの声に割り込むように、美澤恵理加がまくしたてた。


「松川係長、どういうつもりですか?あんな淫らしい店に常務の婚約者を案内しようなんて、課長に言いつけますよ!」


 課長?
 彼氏の支社長だろうがよ!
 ふふ、軽くいってみるか。
 口を開こうとした瞬間、


「淫らしい店って、何かしら?面白そうね、どんなお店なの?」


 朱里がイタズラっぽい笑顔を見せた。


「あぁ、実はアダルトショップさ。半分は高原君のため、後の半分は美澤さんのためさ。美澤さんは聞いているよね、彼氏の人事異動。」


 後ろから、人事異動と言う叫びが聞こえたような気がした。


「か、係長、人事異動ってなんですか?」


 口がパクパク動いてるのが見えた。
 美澤恵理加の顔にショックがありありと出ていた。


「あっまだ、聞いてなかったんだ。じゃあ、彼氏に直接聞いた方がいいよ。あと半年ないかな?」


 後ろの席で人事異動、人事異動と念仏のようにつぶやいているのが聞こえた。


「あの、アダルトショップって?あのアダルトショップなの?」


 少し皮肉のこもった口調で、朱里が聞いてきた。


「うん、あのアダルトショップさ。高原君なんかは、入ったことなんかないだろうけどね。」


 どう答えるかな?
 答えで朱里の気持ちがわかるな。
 バカ、振られたのは俺だぜ!
 なんて考えていたら、


「いえ、だいぶ前に付き合ってた彼と、入ったことがあります。あの頃は恥ずかしくて、なにを見たか、あまり覚えてないですねぇ。」


 懐かしそうな顔で朱里が、俺を見ていた。
 あらま、脈ありか?
 う~ん、てことは美澤恵理加をなんとかしなきゃな。
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