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キスより蕩けたヒメゴトを
第1章 【セピア色の二人は】





沙織に経験はなかった。

キスも…その先も。
そのチャンスは何回かあったというのに。大人になるたびに思う。



どうしてあの時手を取らなかったのか、と。


好きな人との甘い時間。頬を滑ったあの手の感触。スカートの中に入れられたあの手の温もり…




ーーブルリ



ああその記憶だけが餌食。
思い出すだけで身体の芯が熱くなっていく…


家に一人でいるとぼうっとした時間にそれは思い出され自分で自慰してしまう事もしばしば。
最近それは強くなって、自分は欲求不満なんだと理解すると羞恥心にかられるがでもやはり止められないのだ。






(やだ学校で……)




疼く下腹部。
ここは教室。ましてや自分が受け持つクラス。今朝は数十名の生徒に注目されていたではないか。





ーーカタッ



その音に沙織ははっと我に返る。


ペンが落ちた音に助けられた。
このままだったら胸の熱さに堪えきれず危うく自分の身体を"こんな所"で弄ぶところだった。と沙織は胸の内で恥ずかし気に俯いて落ちたペンを見つめた。



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