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NOROI〜呪い〜
第18章 七色の呪い
暗いバスルームの磨りガラスが内側から時おり七色に光り、シャワーの音に紛れて電動歯ブラシのようなヴヴヴ…という機械音と荒い息づかいが漏れ聴こえる。

怖いもの見たさでそっとガラス戸を開けると、壁に手をついて尻を突きだした女の股間に男が光る棒状のモノを出し入れしており、それがシャワーに反射して虹のように見えた。

俺の視点が低いことから、これは子供の頃の夢を見ているのだと確信する。
あれは、小学校に上がる前の事だったか…


俺の実母と離婚した父は、その一年後に再婚した。
当時彼女はまだ二十歳で、父が入院したことのある病院の看護師だった。

彼女を紹介された時、母というよりキレイなお姉さんができたみたいで嬉しかったことを覚えている。


そんなある日、夜中に目が覚めてトイレに行こうとした俺はバスルームの音に気づいた。


今思えば、壁一枚隔てた隣の部屋に俺が寝ていては落ち着いて夫婦の営みができなかったのだろう。
電気も点けず、声をシャワーの音でかき消してまでセックスする二人がどこか滑稽だ。

やがて父はカラフルなバイブを足元に置き、若い後妻の腰を引き寄せてバックスタイルで繋がった。
俺は開けた時と同じように、ガラス戸をそっと閉めてトイレに行ったはずだ。


ところが夢の中の俺はそのまま中に入り、父を押し退けた。
そしてレインボーバイブを拾い上げ、リアルでは見たこともない彼女の蜜壺にそれを突き刺してグリグリと抉った。
チカチカ光るバイブが愛液で濡れた淫部をイヤらしく彩る。

「ああんッヒカル君…もっとォ」

現実では聴けない言葉が彼女の唇から漏れた。

俺はその声に全身がカァッと熱くなり、
「ナナエ…!」
バイブを放り出して彼女に挿入した。
もう幼稚園児ではなく今の俺の身体だった。





―――目が覚めて時計を見ると、まだ真夜中だ。

俺は股間の気持ち悪さに舌打ちする。


十何年も家族として一緒に暮らしてきた女性(ひと)に欲情するって、いったい何の呪いだ?

親父が死んだばかりで情緒不安定なのかもしれない。

俺は下着を替え、汚れ物を持って洗面所に向かった。

すると、暗いバスルームからシャワーの音が響き、磨りガラスが時おり七色に光っていて―――…



(終)



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