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NOROI〜呪い〜
第19章 『様』付けの呪い
「やーい、オバちゃんオバちゃん!」

「オバじゃないもん、コハネだもん!」

小学生の時にオレが『小羽(こはね)』をオバちゃんと呼びだすと、それが男子の間で浸透してしまった。

好きだったから意識して欲しかっただけなのだが、毎日オバちゃんと呼ばれて涙ぐむ小羽を見て罪悪感で胸が痛んだ。


高校二年の頃だったか、小羽の鞄からレターセットが落ちたので拾ってやると、空の封筒の宛先が『小羽 様』となっていた。

「返信用封筒の名前に付けるのは『行』だろ?これじゃオバサマじゃん」

「ど、同人誌の通販ではサークルさんの手間を省くために最初から『様』って書いておくのが常識なのよ!」

オレの手から封筒を引ったくり、小羽は教室から出ていった。

オレはそれからオバサマと呼んだ。そう呼ぶのはオレだけだったから、調子にのって連呼した気がする。


卒業式の日、もう会えなくなる小羽に告白しようか悩んだが、
「都会の大学に行っても元気でな、オバサマ!」
結局最後まで素直になれなかった。


――二年後の成人式、居酒屋で同窓会をすることになった。

女子に囲まれた小羽はすっかり垢抜けた美人になっていて、もうオバちゃんオバサマなどと気安く呼べない雰囲気だ。

「うわぁ!小羽の彼氏すごいイケメン〜ッ」

女共の黄色い声に、オレの耳はダンボになる。

「やだ普通よ、全然」
小羽は口では謙遜しているが、満更でもない顔をしていた。

いてもたってもいられなくなり、オレは小羽の腕を掴んで店の外へ連れ出した。

「ちょっと、何なのよ!?」

小羽はオレの手を振り払って仁王立ちする。

「オ、オレずっとお前が好きだった!オバちゃんとかオバサマとか呼んだのも気を引きたかったからで…だから、その…オレと付き合ってくれ!!」

小羽は必死に告白するオレに、
「キモッ」
吐き捨てるみたいに言った。

「アンタのせいで私がどんなに嫌な思いしたか分かってんの?好きな子に意地悪しても許されるのは、イケメンの特権なの!!例えアダ名のことがなくてもアンタみたいなキモ男とは付き合わないけどね!」

小羽は踵を返し、さっさと店の中に消えてしまう。



凍てつく寒空の下で鼻水と涙がみるみるツララになったが、オレは惨めに立ちすくむばかりだった。


(終)

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