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NOROI〜呪い〜
第22章 少女漫画の呪い
高校教師の万田は、生徒から没収して返し忘れた少女漫画をビールのつまみにペラペラ捲ってみた。

「そうか…そうだったのか」

漫画を読み終えた万田は目から鱗が落ちたような気分で、憂鬱だった翌日の服装検査が急に待ち遠しくなった。


翌朝、校門前

「義屋留(ギヤル)!お前、俺のこと好きなんだろ!!」

「はあ!?」

ギャル風の女生徒が顔をしかめて万田から距離をとる。

「何度指導しても更正しなかったのは俺の気を引きたかったんだよな?可愛いとこあるじゃないか」

「あ?ざけんな!キモいんだよ!!」

万田の足元に唾を吐き捨て、女生徒は足早に立ち去った。

「…あれ?」

気をとりなおして次々問題児に声をかけるが、同じように全員に逃げられる。

10人目を見送って、万田も漸く気づいた。
「畜生!少女漫画なんて嘘ッパチじゃないか―――ッ!!」


「お、おはようございます、万田先生…」
泣き叫ぶ万田にメガネの少女がおずおずと挨拶をした。

「ハッ!?あ、ああ、おはよう、間字芽(マジメ)」

「…あのぅ」

「どうした?」

少女はスカートを握りしめてモジモジしている。

「実は今日、姉のお古のスカートと間違えてしまって…規定より短いんです…」

「言われてみれば確かに…でもそれくらいなら大丈夫、行っていいよ」

「…そう、ですか…」

心なしかガッカリした様子で少女は歩き出す。

「あ、間字芽!」

「はいッ!!」

勢いよく振り向いた少女の思いがけない笑顔に、
「お、お前の漫画、アパートに忘れてきちまったんだ。返すの明日でいいか?」
ドギマギしてつい声が裏返る。

「…行っちゃダメですか?」

「え、どこに?」

「せ、先生のアパートに。あ、ま、漫画を返してもらいに行くだけですよ?下心なんてこれっぽっちもないですから!」

真っ赤になってアタフタする少女が可愛く見えて頬が緩み、
「お前、もしかして俺のこ…」
ついでに口を滑らせかける。

(まさかな…)


「いや、さすがにそれはマズイよ。明日必ず持って来るからさ」

変なところで学習能力を発揮した万田は、引っ込み思案な少女の精一杯の勇気を台無しにした。


万田の春は、まだ遠い――…


(終)



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