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NOROI〜呪い〜
第23章 ゴザの…
「へへへ…評判通り、夜鷹にしとくなぁ勿体ねぇくれぇイイ女だぜ。これからも贔屓にしてやるよ」

安吉は川原の土手に敷いた筵(ムシロ→藁やイグサで編んだ簡素な敷物→ゴザ)の上で、夜目にも白い柔肌を存分に味わっていた。

「…生憎だけど、ここに立つのは今夜で終いなんだよ」

「そりゃまた、なん…がッ!?」

女の手が閃き、安吉の首筋に熱い痛みが走る。

「それはね、あんたが最後の一人だからさ」

みるみる赤く染まる女の白い顔が、ゆっくり傾いてゆく。

(いや…傾いているのは…俺の、ほう…)


安吉の骸を冷たく見下ろしながら、
(あんた…終わったよ)
血まみれのお妙は妖艶な夜鷹から貞淑な女房の顔に戻った。


お妙の夫・田助は真面目な畳職人だったが、一月(ひとつき)ほど前にヤクザ者達の喧嘩に巻き込まれて命を落とした。

お妙は夜鷹に身を落として逃げた五人の男達の話を客から訊き集め、夫の形見の畳針で敵(かたき)を次々手にかけてきたのだ。

ことの最中はどんな屈強な男も隙だらけで、お妙の身体の上で皆 呆気なく息絶えた。



安吉を簀巻きにして川に蹴落とした後、お妙は夫の墓前で穏やかな夫婦水入らずの一夜を過ごし、明け方 寺の近くの川へ身を投げた。




―――…


「ん…」


夫に優しく撫でられた気がして、お妙はふと目覚めた。

身を起こすとそこは川原の柔らかい草むらで、お妙の身体には真新しいゴザが掛かっている。

「…まだ来るなってことかい、あんた?」


暖かい朝の日差しに包まれ、お妙はゴザを抱き締めて涙を流した。




(終)





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