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ねえ、脱がせて欲しい。
第1章 【ねえ、むかつくわ。】
***




「おお、我が愛しい娘よ…久しく見ても美しさに磨きがかかっているな…もっと顔を見せなさい」

「お帰りなさいお父様。寂しかった」




ある間に辿り着くとそこには数ヶ月振りに帰ってきた父親が愛香を見るなり嬉しそうに綻んだ。
軽く抱擁を交わし頬に口付けると愛香の父親、光隆(みつたか)は愛香の腰に手を添えて側にあった椅子を引き、座らせる。



「身体に変わりは無いか?食事はきちんと三食摂っているだろうな?
最近また執事を辞めたそうじゃないか。取り締まり、何を考えている」



キッと側にいた使いを睨み付ける光隆にびくりと肩を震わせると頭を深く下げ謝罪の言葉を口にする。そんな彼を横目に愛香は首を横に振り、間に割った。




「責めないであげて下さいお父様。わたくしのワガママに付き合いきれない方々ばかりで申し訳ないと思っているの」

「おお…優しいな愛香は…」



本当にそう思っているのか理解に苦しむが疑いもせず光隆は我が娘を優しいと絶賛する。
この子供有りにこの親有り、という所だ。





「ところでお父様。いつまでこちらに?」

「あぁ、またこの後直ぐに。すまないね…いつも寂しい思いをさせて」

「…いいえ、マカや皆さんが居てくれるもの。お父様はお仕事に集中なさって」



こんな娘に甘い父親に

一度は外に出てみたい。
そう言う事はすんなり受け入れてくれるだろう。だけど愛香は何も言わなかった。いや、言えない。

勝手な彼女の見解だが自分の母親が亡くなったのは外出して帰らぬ人となったからだ。
莫大な身代金は苦では無かったがその命が戻ってくる事は無かったのだ。
それを昔から白ノ百合邸に居る取り締まり役から聞き出しそこだけ愛香は欲を出さなかった。






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