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学園物えっち短編集
第20章 桜舞い散る中の君



桜さんがトイレに行っている間に俺は電話を折り返した。

「もしもし!?」

「もしもし…あの、吉野ですけど」

「あ…何度も電話してしまってごめんなさいね。桜、一緒じゃないかしら?」

「はい、一緒にいます…今北海道の函館空港に…その…桜さん行き先とか話してませんか?」

「函館!?嘘…今日の朝、部屋に行ったら日曜日に帰るって置手紙だけ残ってて…あの子、明日から入院するのよ…」

「え…入院?」

「やだ…あの子、吉野君に話していないの!?」



「吉野君…。誰と電話してるの?」

「桜さん!俺…聞いてないんですけど…明日から入院ってどういう事ですか?」


桜さんは俺の前まで来ると、俺が持っていたスマホを取り上げた。


「もしもしお母さん?手紙読んだでしょ?明日帰るから………やだ…絶対帰らない!お願い…今回だけだから…」


桜さんは電話先のお母さんにそう言って、電話を切ってスマホを俺に押し付ける。



「入院の事言ってなくてごめんね」

「桜さん、帰りましょう…帰りの航空券買ってきます」

「帰らない!最後の桜見せてよ…もう桜見られないと思ってたけど、まだ見られるって吉野君が教えてくれたんだよ?」

「最後とか言うなよ!来年また見ればいいだろ!」

「来年はない。今日見れなかったら私もう桜見られないの」

「…そんな冗談笑えないです。そんなわけないじゃないですか」



桜さんの言葉を受け入れたくなくて、俺は声を震わしながら言った。


「ごめんね…ッ…。冗談だったらいいよね…」

「…」


俺は何も言わずに、涙を流す桜さんの手を握って歩き出した。
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