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不条理な世界に、今日も私はため息をつく
第2章 コンビニはどこですか
「俺から逃げだそうとするなど見上げた女だ。名前を聞いてやろう」

「名乗る前に名乗りなさいよ、聞きたくないけど」


 ……その時、あたしは気づけばよかったんだ。

 果てなき砂漠地帯に、行き止まりがあることを。


 そうすれば、危険を察知して回避することが出来たのに。

 ああ……後悔先に立たずとはこのことだろう。


「……お前、俺のこと……クソ男って言ったよな」


 べちょっ、べちょっ、べちょっ……。

 なにこの顔にかかる、水分を含んだ生温かいもの。


 めちゃくちゃ臭いんですけど……。


「お前こそが、クソ女っていうんじゃないのか?」


 顔に落ちてきたそれを手で掬ったあたしは、大声を上げて怒鳴る。


「このクソラクダっ!! お前なにをしているっ!!」



 あたしは、昂奮したらしいラクたんの排泄物まみれとなり、そして大爆笑している男はそんなあたしにこう言い放ったのだ。


「濡れたものはすべて灼熱の太陽が乾かしてくれるだろう。

こんな挨拶のような口づけごときで濡れしきったお前の股もな」


 破廉恥男は、ラクたんに飛び乗ると……


「――お前、主人が誰かわかるな?」

「ンゴォォォォォ!!」


 ここでは唯一の移動手段であるラクダを威嚇し、その尻を叩くと……行ってしまったのだ。



「あはははは。じゃあな、クソ女。ああそうだ、お前にこれをやる。売れば幾らかの金にはなるはずだ」



 汚物まみれのあたしを置いて。


 僅か数秒にて、笑いながら――。



「まあ、商人か店があればの話だがな」


 無情にも。



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