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堕ち逝く空
第1章 突然の手紙
 改めて手紙を持って、蝋燭にある印を見た。
 赤い印、読めない文字が刻まれている。なにかの紋章のようにも見えた。

「………本当に俺がこれを開いていいのかよ?」
「私一人じゃ、開く勇気も持てないのよ」
「あー…」

 見た目は気が強そうなのだが。綾香はどちらかというと物静かな方である。手紙を海風する彰義に隠れるように、覗き込むのだが……。

「目を閉じて手紙が読めるかよ」
「だって、本当に怖いんだよ」

 生まれた時から母の存在を知らない綾香にしてみたら。父以外にまだ家族がいるなんて青天の霹靂といって過言ではない。しかも兄という存在に興味があるなしで言うなら、多少はあると言っていい。

「ん?」

 丁寧に開封した封書の中には、一枚のカードがあるだけだった。
 それはとても優しい香りがするカードで、内容『招待状』の三文字。それから『上泉綾香様』と名前があり、日付が打ち込まれている。その日付に眉間が寄った二人だった。

「どうして卒業式の日の前日な訳?」
「私に聞かれて、どう答えて欲しいの?」
「それもそうだな…」

 そしてその日は綾香の誕生日で、ようやく18になる日でもあった。

「不気味だわ…」
「いや、これはどう考えてもドッキリとかそんなノリじゃなきゃ、笑えねぇよ」
「……父ちゃんにコレ見せる」
「その方がいいな…」

 どう考えても二人でコレに対する答えなど見えない。それにもしかすると父が仕掛けた大きすぎるドッキリに期待した。………可能性が0ではないという事実に、縋る気持ちで綾香はそのカードを封書の中に押し込んだ。

「あー、気持ち悪いっ」
「それが本音だなぁ」
「本音ですとも! 今日は父ちゃんが帰ってくるまで此処にいる!!」
「ええええー!?」
「何? 文句あるの?」

 きょとんと首を傾げて綾香が問うと、視線ごと顔を反らした彰義が言いにくそうに呟く。

「……今日、母さん……夜に友達と飲み会するって言ってたんだけど」
「何か問題でも?」

 反対に首を傾げて問うと、とても気まずそうに彰義は言った。

「あるだろ? 俺らさっきの瞬間から幼馴染ではなく! 恋人になったんだぞっ!?」
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