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堕ち逝く空
第2章 始まりは静かに…
 アナウンスが流れる。その間も男の指は、細々と動いている。逃げようと思うにも密着した身体が、香織を逃がさないように拘束していた。
 駅に到着すると頬を撫でる風が、まだ冷たく火照りだした身体の熱を軽く奪う。視線を向けると綾香はこの駅で降りてしまった。
 たったひとりで逃げることも許されず、好き勝手にされる肢体。
 悔しいと悲しいと混ざるのが、気持ちいいという感覚。

「ふぅ…」

 降りた数以上の人が更に詰め寄せてくる。男の指が発車を狙うタイミングで、濡れ開きだした蕾の中心を一気に貫いた。
 口元を押さえて俯く。
 固く閉じ視界は黒いまま。
 
「え…?」

 そう呟くと同時に、パンツがずり下ろされた。最後まで落とされることはないが、男の手が自由に動ける程度にはなる。中指がゆっくり抜かれて、香織は事が終わったと思った瞬間、先ほどよりも勢いよく入ってきた。

「っ!」

 なんとか声は殺せたが、ズッズッと出入りを繰り返しだす男の中指。
 混雑していて音は大きくないが、クチャクチャと水音が聞こえて羞恥に赤くなる。同時に先ほどよりも強い快感が、身体を走り香織は男の身体にしがみついた。
 そうでもしないと声が殺せない。時々漏れる声は濡れて艶めいているのが分かった。
 頭の奥が赤くなる錯覚。出入りする指と芽を撫でる掌。潰し、捏ねて、また潰して捏ねる。徐々に競りあがる何かに耐える。震える身体が止まらない。香織は全身を巡る血液が、ソコ集中している感じがした。

「ぃあっ…!」

 何度も何度も翻弄してくる快感の波が、大きく飛沫を上げた。
 脱力してぐったりする香織を、男の濡れていない手が後頭部に触れる。何度もゆっくりと撫でられた。
 それまで目を固く閉じたり、男に顔を覚えられたくない一身で逸らしていた視線。静かに正面にある顔を香織は初めて見た。

「明日もこの電車で…」
「っ!?」
「乗らなければ、…可愛い妹がこうなる」

 耳元で囁かれた言葉。
 全身の血が一気に落下する。それもその筈だ…香織には同じ歳の妹がいた。
 学校は違うものの、そのことを知っているのは家族と仲がいい友人達だけである。その事実をこの男は知っているという--恐怖。
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