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堕ち逝く空
第1章 突然の手紙
二人の間で沈黙が数瞬落とされるが、彼は懐から一通の手紙をそっと差し出す。真っ白い封筒で宛名もなにも記入されていない。静かに差し出された封筒を、どう対処していいのかと迷う。
「申し遅れました…私は、高円寺順と申します、貴女の従兄弟にあたります」
酷く冷めた笑顔を見せる。慇懃であるからそう見えるのか、綾香は判断に迷う。しかしメッセンジャーを自任している以上は、目の前の封筒を綾香が受け取られなければ順は帰してくれないだろう。
大きなため息をひとつ。
諦めや怒りの逃がしとして、大げさに綾香はついた。
「これを受け取ったら、貴方は消える?」
「受け取られないと、消えるでしょうね」
ますます不安になること言う。そしてふっと気がつく。ここは正門の付近で、綾香が出るのが遅かったとしても、まだ学校から人が出てきておかしくない時間である。しかもここは車も通れるほどの交通量だ。それが順を見かけてから出くわしていない。
周囲を改めてきょろきょろとするが、やはり人の影は見えなかった。
「少しだけ、交通規制をかけてます。…会話の邪魔をされたくありませんでしたので」
さらりと凄い一言が出た。
綾香に封筒を一通渡すだけで、交通規制とかそれってどんな世界だろうと、本気で恐怖する。なにかの小説か、ゲームか漫画にでも紛れこんでしまった錯覚がする。言葉もなく絶句する綾香に順はもう一度封筒を差し出した。
「あまり長く規制すると、他の方々の迷惑になりますよ」
「貴方が止めてるんでしょうっ」
「我が主人の命ですから」
あっさりと切り捨てて、封筒を再三差し出す。綾香は言いたい言葉も沢山あったのだが、とりあえずこれを受け取らないことには、沢山の人間が迷惑を受けることを理解する。もう一度さっきよりも大きくため息をついて、差し出された封筒を片手で受け取った。
いやいやで、受け取るんだという意思表示だ。
その意思は通じたようで、冷たい笑みを浮かべて一礼をした。
「申し遅れました…私は、高円寺順と申します、貴女の従兄弟にあたります」
酷く冷めた笑顔を見せる。慇懃であるからそう見えるのか、綾香は判断に迷う。しかしメッセンジャーを自任している以上は、目の前の封筒を綾香が受け取られなければ順は帰してくれないだろう。
大きなため息をひとつ。
諦めや怒りの逃がしとして、大げさに綾香はついた。
「これを受け取ったら、貴方は消える?」
「受け取られないと、消えるでしょうね」
ますます不安になること言う。そしてふっと気がつく。ここは正門の付近で、綾香が出るのが遅かったとしても、まだ学校から人が出てきておかしくない時間である。しかもここは車も通れるほどの交通量だ。それが順を見かけてから出くわしていない。
周囲を改めてきょろきょろとするが、やはり人の影は見えなかった。
「少しだけ、交通規制をかけてます。…会話の邪魔をされたくありませんでしたので」
さらりと凄い一言が出た。
綾香に封筒を一通渡すだけで、交通規制とかそれってどんな世界だろうと、本気で恐怖する。なにかの小説か、ゲームか漫画にでも紛れこんでしまった錯覚がする。言葉もなく絶句する綾香に順はもう一度封筒を差し出した。
「あまり長く規制すると、他の方々の迷惑になりますよ」
「貴方が止めてるんでしょうっ」
「我が主人の命ですから」
あっさりと切り捨てて、封筒を再三差し出す。綾香は言いたい言葉も沢山あったのだが、とりあえずこれを受け取らないことには、沢山の人間が迷惑を受けることを理解する。もう一度さっきよりも大きくため息をついて、差し出された封筒を片手で受け取った。
いやいやで、受け取るんだという意思表示だ。
その意思は通じたようで、冷たい笑みを浮かべて一礼をした。