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堕ち逝く空
第3章 調教と書いて「愛」という
肩で息をしながら、彼の手が何処にあるか分からないように鞄で隠す。人の波が先ほど増えてより密着する。電車の発車を待つより先に、壺の中に入ってきた。
ズッと音を立て。先ずは一本。幾ら開きだした所とはいえ完全に開いている訳ではない。薄膜があるだろう前で指の侵入は止まる。二関節ほど埋めた位置で、小刻みに出入りを繰り出す。頭の中が既にドロドロで何も分からなくなり掛けていた。

「流石にキツイ、…か…」
「…? んぅ…っ」

動きを止められる。身体は既に香織の意識も飲み込み、焦れた。

《奥まで欲しい…っ、もっとっ……》

性に、理が崩れた。
香織はもごもごと身体を自ら揺すり、快感を得ようとする。腰を抱いている手が、そこを撫でながら香織の動きを見ていた。
膝を折ると少し深くなる。両足を開けるだけ開いて、動きを完全に止めた指を使い気持ちよくなる為に動く。細くなる瞳が何を考えているかなど、理性を喰われた香織には分からない。ーーモット強イ、刺激ガ欲シイ…。
その気持ちをようやく汲んだように、男の指がもう一本ゆっくりと蜜壺に沈みだす。先よりも質量を増したことで、両手で口元を覆い声を殺す。ぐちゃにゅちゃっと水音を立てて快楽を与えられた。
芽を慰めていた時とは違う激しさで、責め立てられる。声が殺しきれなくて漏れてしまいそうになるのを、必死で隠す。

「悪い子だな…」

クスッと漏らす声に身体が震える。耳朶に囁くように寄せられた口が香織の髪に小さなキスをひとつ送る。その瞬間に逆らえない波に呑まれて果てた。
念押しするかのように男は幾度か出入りを繰り返し、香織がイききるまで快楽を与えた。

「……今日は此処までだな、…明日もおいで」

そう言うと男は止まった駅に降りていく。香織はポールに力なくしがみつくしか出来ない。肩で大きく呼吸を繰り返す。座りたいという気持ちが大きくなるが、こんな中途半端なところで席が空いている筈もない。ーー学校の最寄り駅にはまだ遠い次の駅で香織は降りた。

「……気持ち良かった…」

支えられた腕の感触。あれほど異性を近くに感じたのは初めてだ。去りゆく電車を振り返り、明日には自らの意志であの電車に乗るのだろう。…彼の目的が何であるのかは香織には分からない。けれど真白だった性を真っ赤に塗り替えられたことだけは分かった。
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