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堕ち逝く空
第3章 調教と書いて「愛」という
「ふ…ぁ…ん…ぅ…っ」
ピクピクと跳ねる身体をもう片手で支えられる。ーー彼の腕の中で二度、香織は果てた。
最初の日から数えて10日も経っていない。相手の名前すら分からないのに、どうしても惹かれてしまう。抱かれたい、とすら思う自分が奥に鎮座していた。
魔術に魅入るように、惹かれていく。警笛は既に香織には意味のないものになっている。手を引かれ彼と一緒の駅で降りる。一つの紙袋と一緒に一枚のメモが挟まれていた。
彼はそのまま無言で駅を出て行く。一ー1度も香織を振り返らないまま……手にした紙袋広げると、何処かの既製品の服が見える。全体的に淡い色が見えた。
「…着替えて来いってことかな?」
とりあえず彼に贈られた紙袋を抱き、香織は女子トイレの中に入って行く。広めの個室に入ると、着替える為の台が置かれている。靴を脱いで紙袋から見えた淡い色のワンピース。手触りの良さから質の高いものであること。下着まで入っているのを見て、誰も見ていないのに顔が赤らむのを感じた。
今度もやはり下着としての機能を、全く成さないと断言出来る造りで。どういう所でこんなものが売られているのだろうと不思議に思う。それも履き替え、ガーターベルトという物を生まれて初めて見た。
小さな紙につけ方が書いてあり、香織は素直にそれをつけ履く。ワンピースは膝よりも若干短めであるものの、太ももの半分は隠してくれた。
「こんな短いもの…履いたことないから…恥ずかしい…」
全てを着衣し終えると、制服などを紙袋に収める。紙袋が大きいので、学校鞄も一緒に入れてみた。
最後に取り出したものは、小さな肩掛け鞄だ。財布や携帯電話など、必要な物は全てこちらに移す。手洗い場に向かうと色付きリップを塗る。櫛で乱れた髪を整えると準備は万端だった。
「……初めて誘われたんだもの…」
片想いでは終わらないのだと思う。服も触れていただけあって、香織のサイズにきちんとあっている。ただ胸元や裾が少しだけ生地が物足りない気がするのは、香織は普段どちらかというとロングスカートを愛用しているためだ。着慣れない服というものは、最初の一歩がとても冒険を覚えた。
「………メモ用紙にある地図の場所へ向かうだけだね…」