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堕ち逝く空
第1章 突然の手紙
「でもコレを貰った限りは、父ちゃんに聞かないと駄目だな…」

 母のことも含め、向き合うにはいい時期なのではないかと綾香は考えた。
 聞きたくても聞けない事実に、まごまごとしていた子供ではもうないのだから。…飾られている写真でしか知らない母を知りたい。どういう人だったのか、産まなければもっと生きれていたのに。――

「ん? 私の思考が暗い…あー、駄目だ…」

 触れないようにしてきた部分を、いきなり突きつけれて困惑している。けれどこれがどんな内容であれ、事と次第によっては父に問わなければならない。それでもやっぱり手紙を自分一人で開く勇気もない。

「………」

 携帯を取り出し、仲のいい相手とだけIDを交換しているアドレスを開く。綾香は相手のページを開き、ヘルプのスタンプをひとつだけ押す。相手…幼馴染である上條彰義は、暇をしていたのか返事はすぐに来た。
 詳しくは会ってから伝えるとメッセージを送ると、すぐにスタンプでオッケーと返事が来る。それを眺めて一回だけ吐息をついた。
 色々と複雑に絡んでいるとは思う。とりあえず家には彰義の家に寄ってから帰るとだけ送信した。
 もっともこんな時間に帰ったところで、父は会社にいるのであまり関係はないのだが。…



 最寄駅のアナウンスに、綾香は扉の方へ移動する。プッシュという音で開くと、意気揚々と駅の出入り口へと向かった。

「よぉ」
「ん?」

 駅を出ると見知った顔が、携帯片手に笑う。学校が違うので聞くだけの話しだが、そこそこにラブレターやら告白は受けているらしい。他が見る分にはフィルターも掛かってそうだと綾香はこの鈍い上に、ヘタレ気味の幼馴染を見上げた。
 綾香は女子の中でも小柄で、彰義は男子の中でも長身の類である為だ。とは言え20センチ以上違うと首は若干辛い。

「待ってたの?」
「そらぁ…どうせなら、早い方がいいだろ?」
「まぁ…そうなんだけど」

 苦笑すると義明が乗ってきた自転車の後ろに座る。鞄を両手で持ってると取り上げられてしまった。
 それも大体にして毎回のことなので、綾香は素直に空いた両手で彰義の腰に腕を回す。

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