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堕ち逝く空
第1章 突然の手紙
 まだ寒い季節には擦り寄っていたくなる温かさに、綾香は無意識に頬を摺り寄せる。そのまま脳裏にふいに沸いた妄想を、そっと振りほどくことにした。

《好きなんだけどなー、彰義も多分好きで居てくれていると思うんだけどね…妹感覚かも知れないけど!!》

 移動して十分ぐらいすると家が見えてくる。そのまま彰義は綾香の家ではなく、隣にある自宅へと自転車を止めた。
 昔から自宅よりも長くいたので、第二の家とも言える。私物もかなり置いている方で、男兄弟しか授からなかった彰義の母は、綾香のことを愛娘と言って可愛がってくれていた。

「ただいまー」
「おかえりなさい」
「お邪魔します」

 綾香の声が聞こえると、いそいそと出迎えてくれる彰義の母へ挨拶すると、寒かったでしょって言いながら、温かい飲み物を用意してくれるとのことで、そのまま彰義の部屋へと入った。
 昔はこの部屋で布団を並べて寝ることも多々あったのだが、流石にこの年になるとそういうことも無くなってしまった。

「…で、どうしたんだよ?」
「うん……」

 そういうとまた黙り込んでしまった綾香の頭に触れる掌。その優しさに目を閉じて素直にされているとノックと同時に扉が開き、彰義の母が入ってきた。

「あらやだ…珍しく積極的になっているのを邪魔しちゃったかしら?」
「だー!! 母さんっ!」

 真っ赤な顔で慌てて離れる体温が、少し惜しかった気もしないではない綾香は、小首を傾げて湯気がほのほのとしたマグカップを受け取った。

「あらだって、あんた達ってそうでしょ?」
「ぶっ!!」

 今度は綾香がココアを遠慮なく噴出してしまう。あらあらっと言いながらも、けろっとした彰義の母は、用意がいいのか噴き飛んだココアを拭い、ティッシュを綾香に差し出した。

「おばさん…ありがとう」

 でも原因は間違いなく彼女である。しかしそれは口にしていけないことだと綾香は分かっているので、大人しく温かいココアに癒されることにした。
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