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堕ち逝く空
第1章 突然の手紙
彰義の母がドアを閉じると、微妙な空気が二人の間に流れるのを感じる。居たたまれなくて、このまま脱兎のごとくドアの外へと消えたい本心が溢れそうになった時、彰義は決意したような瞳を綾香に向けた。
「…な、なに?」
「………」
笑みが引きつるのを感じる。それだけ見つめられれば、身体が緊張し穴が開くのではないかと思ってしまう。それでも言葉を詰まらせているのが、幼馴染として過ごした時間で熟知している癖だ。勘違いではないかも知れない。淡い粉雪のような期待が、ほんの少し芽生えそうになった。
「………恋人、お前居ないよな?」
「居たら此処にいませんが?」
「いきなり敬語になるなよ! 俺が…よけいに緊張するだろっ」
そんなこと知ったこっちゃない。と内心では思うものの、長かった両片思いに終止符が打たれるのかと、ちょっとだけ先走って感じる。ハッと気がつくと、いつの間に距離を詰めたのか。隣に--触れそうな、位置に彰義がいた。
「………」
「何? 恋人が居なかったら何?」
へタレも大概にしろよ? と内心でさらに思うのだが、焦っては仕損じてしまう可能性もあるし。何よりも大切な言葉は男から聞きたいと綾香は切実に思う。誘うのは毎回に近く綾香からだ。けれどそれを一度として断られたことがないのが、より気持ちを揺るがせていた。
「………結婚前提に、お付き合いなるもの…俺としませんか?」
「はいっ!?」
唐突に二段ぐらい跳ね上がった言葉に、目を大きく見開く。恋人イコール結婚を出されて本気で驚いた。
もちろんそれは嫌であるとか、そんな訳ではなく。単純に驚愕しただけの話であった。
「いきなり過ぎない!?」
「いや…どうせ、お前…俺の気持ちなんてお見通しなんだろ?」
「いやいやいや…私はエスパーでもなんでもなく、ごくごく普通の女子高生ですからね? そんなのお見通しではないよ??」
なんとなくそうじゃないだろうか。
そうであったらいいなぁ。
そのレベルのことである。好きだとも、愛しているだとも聞いたことは終ぞなかった訳で、どうやってお見通しと思ったのか不思議な綾香は、照れるよりも喜ぶよりも先に、ツッコミを入れていた事実に、胸の内にだけ涙をツーと零していた。
「…な、なに?」
「………」
笑みが引きつるのを感じる。それだけ見つめられれば、身体が緊張し穴が開くのではないかと思ってしまう。それでも言葉を詰まらせているのが、幼馴染として過ごした時間で熟知している癖だ。勘違いではないかも知れない。淡い粉雪のような期待が、ほんの少し芽生えそうになった。
「………恋人、お前居ないよな?」
「居たら此処にいませんが?」
「いきなり敬語になるなよ! 俺が…よけいに緊張するだろっ」
そんなこと知ったこっちゃない。と内心では思うものの、長かった両片思いに終止符が打たれるのかと、ちょっとだけ先走って感じる。ハッと気がつくと、いつの間に距離を詰めたのか。隣に--触れそうな、位置に彰義がいた。
「………」
「何? 恋人が居なかったら何?」
へタレも大概にしろよ? と内心でさらに思うのだが、焦っては仕損じてしまう可能性もあるし。何よりも大切な言葉は男から聞きたいと綾香は切実に思う。誘うのは毎回に近く綾香からだ。けれどそれを一度として断られたことがないのが、より気持ちを揺るがせていた。
「………結婚前提に、お付き合いなるもの…俺としませんか?」
「はいっ!?」
唐突に二段ぐらい跳ね上がった言葉に、目を大きく見開く。恋人イコール結婚を出されて本気で驚いた。
もちろんそれは嫌であるとか、そんな訳ではなく。単純に驚愕しただけの話であった。
「いきなり過ぎない!?」
「いや…どうせ、お前…俺の気持ちなんてお見通しなんだろ?」
「いやいやいや…私はエスパーでもなんでもなく、ごくごく普通の女子高生ですからね? そんなのお見通しではないよ??」
なんとなくそうじゃないだろうか。
そうであったらいいなぁ。
そのレベルのことである。好きだとも、愛しているだとも聞いたことは終ぞなかった訳で、どうやってお見通しと思ったのか不思議な綾香は、照れるよりも喜ぶよりも先に、ツッコミを入れていた事実に、胸の内にだけ涙をツーと零していた。