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執事はお嫌いですか?
第5章 主人と執事とお客さんと
今日、ピーマン・・・食べれたら、アップルパイでも作って紅茶、淹れてあげようかな・・・

「食べれなくても、作っちゃうんだけど・・・」

春様も来ていることだし、帰ったら3人で作る予定だ。
しかし、斎が甘いものを好きかどうかもわからないし、好きな食べ物すらわからない。

アップルパイ、喜んでもらえるだろうか・・・?

今まで色々と料理をして出してきたけど、結構わからないことだらけで――・・・
今のところ好んでいるのは、この紅茶で、苦手なものはピーマンということだけ――・・・

あれ、そういえば――

「俺、知らないことばっかりだ・・・」

ふと、そんなことを思うと、ぎゅっとカートを掴む手が強くなる。

斎が愛しい・・・とは言っても、性格や外見を知っているだけで、好きなことやもの、苦手なことも嫌いなものもまったくと言っていいほど知らない自分がいる。

斎には、自分のことは何でも訊いていい。知っていい。とつい言ってしまったけど、俺は斎のことあまり知らない・・・訊けていない・・・。

浮かれ気分が一変して、ツキンと少し刺さった様な感覚があった。

斎の部屋の掃除をするのも躊躇うし、何よりどこまで踏み込んでいいのだろう――と時たま考える。

一言で言ってしまえば、自分は「ただの高校の先輩で偶然にもアルバイトで学校以外でも顔を合わせる人」だ。

「・・・考えすぎ?」

カートを押して、自然に通路に沿っていくと、魚鮮コーナーへと着いた。
色とりどりで鮮やかな魚介類を目に映しながら、真逆のくすんで、もやがかった気持ちを抱えた。

深く巡らせすぎ・・・?
でも、知らないのは事実だし――

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