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執事はお嫌いですか?
第5章 主人と執事とお客さんと
「はぁ・・・・」

重く溜息をついて前を見てみると、斎が今だにきゃっきゃはしゃいでいる姿が目に入った。

「・・・・お!」

斎も気づいたみたいで、笑顔満点で、たったっと勢いよく近寄って来た。
そんな姿も可愛いと思いながら、その場で待っていると、一瞬ツルっと斎の足元が滑った。

「斎様、走るとあぶなッ・・・」

当の本人は気付かず、駆けてきている。

肝がヒヤっと凍りついた。

従業員がしっかりと清掃をしているのか、ピカピカの床は汚れ一つ無く、はしゃいで走ると滑りそうなほど綺麗だ。

もし、滑ってこけでもして怪我したら――
それが顔だったら――

俺はすかさずカートを隅に置くと、斎の方へ駆け寄って受け止めた。

「んっ・・・」

滑りで上手く止まれなかった斎は俺の胸の中ですっぽり埋まると、ぷはっと息を上げた。

「ん・・・?」

状況を少し理解していないのか、きょろきょろとすると、上目遣いで俺を見てきた。

「クロ、顔色が少し悪いぞ・・・?」
「・・・誰のせいだと思っているんですか」
「・・・?」

力が抜け、安堵の息を漏らすと、ますます斎は首を傾げた。

こういう事を自然とやってしまうから、俺はこんなにもベタ惚れなんだろうか・・・
こういう事を自然とやられているから、ぐるぐる迷って、悩むんだろうか・・・

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