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執事はお嫌いですか?
第5章 主人と執事とお客さんと
「ん~・・・斎、ピーマン食べるかな・・・」

などと小言を漏らしながら、進んでいく。
こんな大きい食品売り場で買い物をするのも、近場ではできないから斎には言えないほど、心でははしゃいでいたりする。
執事をし始めて、最近斎を考えながらスーパーで買い物をするのが楽しくて主夫気分だ。

「この前野菜炒めのときに入れたら嫌そうにしてたしなぁ・・・
買うのやめようかな・・・」

脳内に浮かぶのは、数日前の夕飯のこと。
冷蔵庫にあったあり合わせの野菜とお肉で野菜炒めを作り、出したところ、斎はもぐもぐ食べていたのだがピーマンは自然と皿の端に寄せていた。

その様子を不自然に思いながら席について眺めていると、斎は端にやったピーマンに箸を伸ばしたかと思うと、一口食べるごとに一度見てはゆっくりとポリポリ噛んで、目をぎゅっと瞑って呑み込んでいた。

・・・これは、明らかに斎自身の、ピーマン苦手というサイン。

目の前で一緒に食べていて、かなり可愛そうな気分になったので買うのは悩む。

あの顔は見たくないし・・・

「・・・よし、ピーマンを買うのはやめておこう
後は、りんごを2つほど買って・・・明日の朝食は、おにぎりにでもしようかな」

ピーマンは例外で、次々と野菜や果物を手に取り、見極めて籠の中へ。
一通り見終えたところで、ふと、春様が言っていた言葉を思い出す。

『できるだけ食事には気をつけていたほうがいいかもしれませんね・・・』

「そういえば・・・
でも――・・・」

あの嫌そうな顔は――

『おじさん、いつか帰国したときに、万が一斎の体悪くなっていたら榊先輩殺されますよ・・・

斎とそっくりの気品のある顔で、想像できないほど汚い言葉吐き捨てますから・・・あの人』

ヒヤっと、鳥肌が立つのを感じる。

「ピーマン、克服させないとね・・・」

俺は、しぶしぶピーマンの場所へ戻ると、小ぶりなものが入ったパックを選んで籠へ入れた。
どうやって混ぜようか・・・と考えながら飲料、冷凍食品の所にも行くと、予算を中心に選ぶ。
お茶のパックの棚が近くなると直行して、一番安い紅茶のパックを手に取った。
斎が気になっている、いつもの紅茶のパックだ。

ほどよく香りもよくて、ミルクにも合うと、最初自分が好んで飲んでいた紅茶だったが、斎も気に入ってくれて素直に嬉しかったため、買い続けていたりする。



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