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執事はお嫌いですか?
第5章 主人と執事とお客さんと
「いいんですよ、もう」

俺は斎に笑いかけると、ゆっくりと頭を撫でて安心させる。

「そうか。
なら、行くぞ」

すると、突然、自分のではない体温がするりと俺の中へ入ってきた。

「・・・!」

嘘――・・・

俺は、突然のことに戸惑いを隠せない。

ガチガチの視線を自らの左手にやる。
小さめで白い手が、俺の手を精一杯包もうとしているのが見えた。

――今度は斎が俺の手を握って、ぎゅっと引っ張っているのだ。

「い、斎・・・」
「何だ・・・」

不機嫌そうで照れているようで――。
耳がほのかに赤く滲んているのが、わかる。

「・・・何でもありません――」
「なら行くぞ・・・」

再び触れた斎の手から、トクトクと先ほどの熱が流れてきて、これほどまでにない嬉しさが広がった。

「はい」

顔が熱くなるのを感じながら、カートを掴み、斎に付いて行く。

もう、今はごちゃごちゃ考えずに買い物を楽しめ・・・俺・・・。

自分自身に決め込む様に、心の中で何回も繰り返す。

滅多に一緒に買い物なんて無いんだし――


俺は何とも言えない複雑な気分と嬉しさを半々に、斎との歩調を合わせ春様の元へと歩いて行った。




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