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執事はお嫌いですか?
第5章 主人と執事とお客さんと
「――榊先輩、かっこいい顔が台無しです」
「す、すみません・・・」

手で顔をそっと隠すと、口元をひき締めた。

「そ、それで・・・」

俺は春様に向きなおすと、話題を再開させる。

「後は言ったまんまです。

よっぽど一緒に過ごすのが楽しいみたいですね。
話すときに、自然と笑顔になってましたし・・・」
「そうですか――」

俺自身は、自分だけが毎日充実しすぎて有り余るほどだと思っていたが、斎が話をしてしまうほど楽しんでもらえていることは思ってもいなかった。

この性格でついつい意地悪をして怒らせてしまう日ばかりで、てっきり少し警戒されているのかと・・・。

これは思ってもいなかった、二つ目の嬉しい出来事だ。

「春様・・・ありがとうございます・・・」

そして何より、こんな俺の相談に良い提案をしてくれた春様には感謝しきれない・・・。

その気さくさと優しさに感服し、自然と俺は春様に頭を下げていた。

「わわわ・・・頭、上げてください!」

「学校中の人気者の方に頭下げさせた。みたいなの、何か凄くくるので・・・!」と逆に俺はあわあわさせてしまったが――・・・。

「もう・・・本当にありがとうございます」
「いえいえ、別にいいんですよ。
俺も榊先輩のこと色々知れたので、得しましたし・・・。
互いにプラスマイナスゼロです」
「それならいいのですが・・・」

それでも気になってしまうので、「何かお礼」と言うと、春様は

「だったら、様付けなんてしないで弟みたいに好きに呼んでください。
学校はさすがに周りがざわつきそうなので――学校以外で、ぜひ」
「・・・そ、そんなことでいいんですか?」
「はい」

屈託のない笑いを向けられると、お礼はそれでいいのかな。と戸惑っていたのも納得がいってしまった。

「では、春くんで――・・・」
「はい・・・!」

春くん――

今まで斎以外で、誰かをこんな親しい呼び方をしたことをなく、いざ口にしてみると恥ずかしくなった。

親しく呼べる関係以前に、俺は人とは関わらないから――・・・新鮮な感じだ・・・。

「クロ、春。
お菓子選び終わった。・・・って、何で春はそんなに笑顔なんだ?」

手いっぱいに細々としたお菓子を持って帰ってきた斎は、春くんの顔を不思議そうに見た。

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