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執事はお嫌いですか?
第6章 主人と執事は翻弄し、進む
「春くんは皮つきのままでいいので、半分リンゴを薄切りにしてください。
私は残った半分をすり下ろします」
「了解しましたー」

二人の会話が聞こえた後、ズッズ・・・とクロがリンゴをする音に、タンタンタン・・・・と春が手慣れた包丁使いでリンゴを薄切りにする音が聞こえてきた。
それに合わせて、グツグツとフライパンの中で煮込まれる音にかすかなお肉のいい匂いも漂ってきた・・・・。

地道にパイにフォークで穴を空ける俺には、不思議と楽しくなる雰囲気――・・・家族と和気あいあいと料理しているような気がしたからだ。

俺は小さな幸せを感じつつパイ生地の穴あけをし終わると、丁度クロたちの作業も終わり、いよいよ穴を空けたパイ生地にリンゴを盛り付け、線を入れたパイ生地を乗せるという作業に入った。

卵黄を塗った下生地にすり下ろしたリンゴを盛り、その上に薄切りリンゴを並べて、上生地を乗せる。最後に、フォークで端々を押さえて生地同士をくっ付けて薄らマーガリンを塗れば、パイの準備は終わり。

後は、オーブンレンジのトレ―にクッキングシートを乗せて、その上にパイを置いて20分ほど焼くだけだ。

「――意外と簡単なんだな」

何から何まで大変だと思っていた俺は、あっさりと終わってしまうのに拍子ぬけしながら、んーっと背伸びをした。
なかなかの達成感だ。

「はい。
焼けるのも早いので、ご飯食べ終わってから焼きましょう。

そろそろ、夕飯も完成します。
斎様と春くんは座って待っててください」
「わかった!」

俺と春はエプロンを外し、ダイニングでひと段落・・・。

「なんか、初めてのことして疲れる。みたいな感じがする・・・」
「ははは。でも、なかなか楽しかったんじゃない?」

俺は椅子に座ると、はぁ・・・と息を吐いて、春の言葉に頷いた。

「うん・・・楽しかった」
「出来上がりが楽しみだね」

いつの間にか煮ているお肉や他の料理の匂いも強くなっていて、お腹が少しなった。
時計を見てみると、日もとっぷり暮れる時間だった。

「今日は一日面白かったなぁ――」

久しぶりの春とのお泊まり、ショッピングに魚に、念願のハンバーガー。おまけに、一目惚れした抱き枕もお揃いで買ってもらえた。
こんなに楽しかった一日なんてクロと出かけた日以来で、久々に満足した日だった。
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