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執事はお嫌いですか?
第6章 主人と執事は翻弄し、進む
よく春が泊りに来ていた小学生の頃は、新発売されたお菓子の話とか、ふたりだけの穴場スポットに名前付けたりだとか、子供満載の話だったけど――・・・今となっては高校生の会話・・・。

昔とはちょっと違うなぁ・・・と爺くさく俺はしみじみ。

「あ、そういえば!」

そんな俺の横で春が突然声を上げた。

「・・・どうした?」
「いや、たまごかけごはん味のポテトチップス出てるの思い出した!
あの時買えばよかったなぁ~・・・!」

春は落胆した様子で「明日帰りに買って帰ろうかな」と携帯を操作し、リマインダ―に登録し始めた。
俺はしみじみとした顔を引き締め、内心ぽつり。

――大人という言葉はちょっと買いかぶりすぎたかもしれないな・・・。







「斎様、春くん。夕飯、できましたよー」

しばらく俺が苦笑いして春を見ていると、料理が完成したのかクロが夕飯を持って現れた。
クロが来た途端、ふわっと空腹をくすぐる匂いがして、俺と春はさっと行儀を良くする。

「二人ともそんなにお腹すいていたんですか・・・?」

クロはくすくす笑うと、お盆からランチョンマットの上へと色どりの良い数々のおかずたちを並べる。

並べられた瞬間、俺は真顔から、ぱああっと目を輝かせ頬を緩ませた。
そして、パッとクロの顔を見上げる。
クロは一瞬驚いた様子を見せたが、すぐにほころんだ。


『――今日の夕飯は特別だ・・・!』
『――特別――?』

『――え、それでいいんですか?』
『――うん。
春もいいと言っていた』


クロに頼んだときのことを思い出す。
目の前に並べられたリクエスト料理は、別に高級レストランみたいでもない。イタリアンみたいなオシャレな料理でもない。


クロにリクエストして作ってくれたのは普通の、家庭的な出来たてホカホカのハンバーグ。
それにサラダに、キッシュに、おにぎり――こちらも普通の夕飯。

「クロ、ありがとう・・・!」

俺はいただきます。と手を合わせると、すぐさま箸を取ってハンバーグに手をつけた。
一切れに割るとじゅわ・・・と肉汁が出て、ますます食欲が増してさっそく口に運ぶ。

「――美味しい・・・!」
「よかった――」

クロは胸に手を当て、ほっと息をはいていた。

「んー!美味しいですね・・・!」

春も美味しそうに頬張って、頬に手を当てていた。









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