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執事はお嫌いですか?
第2章 主人の執事は先輩です
いつものゆるくウェーブがかった髪も幾分かしっかり目に整えられ、それに合わせられたかのような銀の細い縁に囲まれたメガネ姿は、今までのクロへの印象がまるで変わってくる。
雰囲気が全く違うし――。
これでさっきのクロとは兄弟と言われても違和感のないレベルだ。
「驚くも何も、お前高校生なのか・・・」
「はい。今日から高校3年です」
「えぇ・・・」
背が高いし、顔も凛としてるから大学生くらいかと・・・。
やはり人は見た目で決めては駄目というのは本当なのか・・・。
「それより斎様、本当に学校に遅れてしまいます。
急ぎましょう」
クロは平然とした態度でプチパニック状態の俺の鞄と自分のを持つと、玄関へと向かっていく。
あのクロが高校生?
しかも先輩――?
「あ、あり得ない」
「斎様行きますよー」
高校生活までもがクロと一緒とは――。
俺は歩いていく背中を見つめ、肩を落とすしかなかった。
街は咲いたばかりの桜で溢れ、つい立ち止まり眺める。
視線を移せば、塀の上で花びらを乗せ眠る野良猫を見つけ、ついほころぶ。
屋敷の桜も綺麗だが、並木もいいな――。
春風はあの出会った日のようにそっと俺の頬を撫でいくと、はらり――と花弁を揺らしていく。
あの時はいきなり両親が海外への飛んでしまったことや、執事と一緒に暮らす知らせが重なってとんでもない日だったが、今日も負けず劣らないとんでもない日だ。
春休み期間は特にクロは変わったことも無かったが、やはり初対面からあの出来事が起こったのもあり俺は常に警戒態勢を取っていた。
当たり前だ・・・。
初めましてでいきなり、・・・キ、ス・・・をしてくる人がこの世の中でどれくらいいるだろうか。
俺が知っている限りでは最初で最後でこの執事だけだ・・・!
そのためか、今日まで完全に休まる日が全くなく、学校さえ始まれば休まるだろうと俺は踏んでいた。
なのに。
「斎様ーどうされましたかー」
数歩先を行っていたこのクロという執事は入学当日に同じ学校の先輩であると爆弾を落としてきたのだ。
クロの制服姿を見た時、俺が目標として数週間抱いていた望みは一瞬にしてその爆弾の犠牲になった。
「またブレザーとメガネが様になっているのが何とも言えない・・・」
俺は望みが散っていった瞬間を思い出しながら、待っているクロへとしぶしぶ駆け寄った。