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執事はお嫌いですか?
第6章 主人と執事は翻弄し、進む
「そういえば斎は最初普通だったね・・・。

でも、その時は斎とはあまりしゃべる仲にはなれてなかったから、斎が何考えているか不思議でならなかったよ。
いっつもおばさんの後ろ隠れてたし――」
「それは言うな・・・」

昔から引っ込み思案なのはアルバムを整理して、改めて自覚した・・・。
春はそんな俺を生で体験しているから、仲良くなっているクロには話し放題・・・。

できれば、この話題は避けたい――。

「あ、今思ったんだけど、春って急に大きくなったよな・・・。
いつからだっけ、そんなに身長伸びたの・・・」
「突然だねー。斎、話の転換が下手・・・」
「う、うるさい。あんまり昔のことは触れたくないんだよ・・・」

シャワーを手に取り、泡を洗い流す。
正面の鏡を見ると、クロとのお風呂を思い出した。

「なんでー?
面白い話いっぱいあって、懐かしいのに」
「――クロに話されでもしたら、恥ずかしくて死ねるから嫌なんだよ・・・」

目に涙を浮かべるくらい笑って、今後の脅しネタになるのは恐ろしすぎて想像もしたくない。

お願いだから、手強い相手に手を貸していくのはやめてほしい・・・。

「あ、なるほど!」

春はクスクス笑って「ごめん、ごめん」と軽く謝ってきた。

「クロ先輩の餌食になりそうなエピソードいっぱいあるもんねー」
「楽しそうに言うな・・・!
俺の立場が危うくなるから、絶対話すなよ・・・!」
「え~?楽しいのにー」

俺は頭をひと振りして髪の水滴を落とすと、春を真っ直ぐに見た。

「・・・絶対に、話すな」
「――わかりました」

春は心底残念そうな顔をしてから、不意に俺の体に目をやった。

「・・・斎それどうしたの?絆創膏いっぱい」
「あ、あぁ・・・これは――」

うっ――来た・・・

話で逸らさせたつもりだったが、春は絆創膏に気づいたようで所々に貼ってあるのを見て不思議そうにした。

こういう鋭いの、やっぱ春は侮れないな――

俺は内心一息つくと、そっと息を吸った。

「・・・これ、虫刺され。腫れてきたから、バイ菌予防で・・・」
「なるほど。この時期に虫刺されなんて、珍しいねー」

平然を装って回答すると、春の何気ない言葉にヒヤリ。
暖かな空気の中、ゾクッと背筋が凍った。

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