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執事はお嫌いですか?
第6章 主人と執事は翻弄し、進む
「傷つけたか・・・?」

伏せたくなる衝動を抑えつつ、クロを見つめる。

「いえ・・・。
ただ――・・・はい、やはりちょっとだけ」

ぎこちない表情を浮かべ、言う。
そんな顔を見て、尚更、俺の中で後悔が大きく、深まってゆく。

それなら――


「だったら外す」

俺は首元に手を伸ばすと、剥がれかけていた絆創膏を一気に剥がす。
クロの目が大きく見開かれた。

「別にクロを傷つけてまで隠したいとは思わない。
それに春だし・・・さっき上手く嘘をついたつもりだが――ばれてるかもな」

俺は自嘲気味に笑ってクロを安心させたかった。

俺は口下手で、あまり物を素直に言う性格ではない・・・。
それは自分が一番知っている。だから、言える時にちゃんと訊こうと思った。

今、一番クロと距離を縮めたかった。

手の力が一瞬で抜けてしまうほど驚いた・・・あんなに感情を露にした顔を見たことがなかったから――。

「斎・・・」
「・・・結構、恥ずかしいんだからな」

俺はキスマークをそっと撫でて、そっぽを向く。

「これで・・・クロと距離が縮まるのなら――別にいいけど・・・」

ぽそぽそと勇気を出していざ本音を言ってみると、顔から火が出そうな思いだった。
俺は慌てて腕で顔を隠して、背を向けた。

「俺は主人でクロは執事だ。
執事の我が儘ひとつくらい聞いてやる・・・!」
「斎いいの・・・?」

クロの収縮した声が届く。

「別にいい。
学校はさすがに隠すけど・・・」
「でも――」
「いいと言っているだろ・・・」
「だって――」
「いいから」
「斎――」

相変わらず不安なクロはらしくない言葉を吐く。
そんなクロに俺は痺れを切らした。

「だから大丈夫って言ってるだろ。
そう何度も聞かなく――・・・っくしゅっ」

大事な場面で、冷えたからなのか、くしゃみ一つ飛び出る。
・・・俺は鼻をさすりながら気まずさと恥ずかしさを誤魔化した。

「――っぷ・・・」

3秒ほどの沈黙の後、クロが突然噴き出し、声を震わす。
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