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執事はお嫌いですか?
第6章 主人と執事は翻弄し、進む
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俺は――




俺は―――こんなにも誰かにここまで温かく、優しく、長く、抱きしめられ、愛されたことはあっただろうか・・・。



小さい頃から、大きな大きな家具に囲まれた空間では、いつもひとりだった・・・。

右を見れば、毎年誕生日で送られてきた、色違いのリボンを付けたクマの人形が並んでいた。
左を見れば、俺だけじゃ食べきれない美味しそうなご飯やお菓子がいっぱいあった。
周りを見れば、“かせいふさん”という優しくて、いつも遊んでくれる、おばあちゃんが居た。

でも違う。
何かが物足りなかった・・・。



『斎、おいで』

そう呼ばれ、抱きしめてもらいながら両親と一緒にベッドで寝た数は、小さな手で数えるのには十分なほどだった――。



『――斎、好きだよ・・・』

何度も強く、優しく抱きしめられ、愛情を一番示すキスは今までにないくらいされた。
それは成長した手で数えるには足りないほど。何週もするほど。

気づけばずっと隣にいる・・・。

「クロ――」
「はい」

ぬくもりがある・・・。
自分以外のぬくもりを感じる。


「クロ―――」


安心するぬくもり・・・。















「――斎様・・・斎様・・・」

ゆっくりと頬を撫でられるのを感じ、目をそっと開ける。

「んん・・・なん・・・だ――」

ぼやける視界の中、目を凝らすと、薄暗い中に間近にボヤボヤの影がかかっているようなクロの顔があった。

この状況、前にもあったな――。

初対面だった時はかなり驚いたが、今は睡魔が勝っているのかあまり反応はせず、俺はうとうとし始めていた。

――さっきまで夢を見ていた気がする・・・。

そこまで現状は把握していないが、わかることはとても温かくてホッとすることと、ゆっくりと自身が動いているということ。

「斎様の力がいきなり抜けるからびっくりしましたよ。
何事かと思ったら寝息が聞こえてきて、案の定寝ていましたし――。

今日は、はしゃぎすぎていましたからね・・・大分お疲れのようで」
「ああ・・・今日は疲れた・・・」

春に、買い物に、料理に、キスマークに。
今までにないくらい、一日でたくさんのことがあった。
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