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執事はお嫌いですか?
第6章 主人と執事は翻弄し、進む
「あ、アルコールでも飲んだのか・・・?」
「ふふっ・・・飲んでないよ。
飲めないし」
「そ、そうか」

酔っているのかと勘違いするほどクロはデロデロで、絶対に学校では見せないであろうマヌケ面を覗かせる。


そんな姿を見て、俺はそっと深呼吸をした。


「クロは―――」

俺はクロの肩を少し押し、距離を取ってから口を開いた。

「ん――?」
「俺に対して・・・好きとかずっと言っているが・・・」

言いながら、ふと、夢の内容をうっすら思い出した。

小さい頃のことだ――。

家ではいつもひとりぼっちで、楽しいと思ったことはほんの少し。
父さんも母さんも毎日忙しそうで、言葉をあどけなく喋る俺でもわかっていたのかもしれない。

忙しいから邪魔しちゃ駄目・・・。
邪魔しちゃ――ダメ・・・。

ワガママなんてもってのほか。

我慢を覚えたのはこのころだった気がする・・・。
寂しいという感情と一緒に――。

クロは好きと言ってくれる。たくさん。

でも、違う。

そうじゃなくて・・・そうじゃなくて―――




「俺は――

・・・クロにたくさん、す、好きととか言われたり・・・
たくさん、き、キスされるより――



ただ、傍に居て、ほ、しい・・・」

気持ちを一言ずつ言葉にすると、喉が焼けるような感覚が襲ってきた。
ただ同時に、ストン。と底に感情が落ちた。

でも、恥ずかしいのは変わらず、顔が見れない――。

ぎゅっとクロのシャツを握り、クロの胸の中へ顔を埋める。

俺がクロの顔を見ないように。
クロが俺の顔を見れないように。

「・・・・・」

クロから返事は無く、時が止まったように感じた。
一言も発さず黙ってしまい、動作も止まってしまった――。


それを察し、どくっと動悸が早くなる。


どうしようどうしよう


言わなきゃよかったと・・・。
口走るんじゃなかったと・・・。 

俺は後悔した。

ワガママすぎた・・・?


内心、落ち着かないほどアワアワして、さらにクロのシャツを強く握りしめると、急に、ぎゅうう――と痛いほど抱きしめ返された。

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