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執事はお嫌いですか?
第6章 主人と執事は翻弄し、進む
「く、クロ・・・」

やっと動いてくれた、と少し安心する。
だが、次の一言で俺の動悸は一層早くなった。

「――気づかなくてごめん
執事失格だね」
「・・・!
・・・ち、違う!そ、そうじゃなくてッ・・・!」

伏せていた顔を勢いよく上げ、腕を握りしめ必死にクロを見つめる。
ふ抜けた要素が一ミリ残さず無くなっていて、代わりに少し困ったような戸惑っているような、そんな顔をしていた。

目の前が揺れる。

違う、違う。
そんな顔させたいんじゃない。

「・・・斎?」
「されるのも、言われるのも嫌じゃなくて・・・」
「―――?」

言うのは恥ずかしいから、早く気づいてほしい――。
いつもの察しの良いところはどこいったんだ――。

・・・胸の奥がムズムズして仕方ない。

「す、す、すき。とか、きす。とか・・・」

まただ。
言葉にしてしまうと思い出してしまって止まりそうになる。


「――・・・嫌じゃない、から――・・・大丈夫・・・。

一ミリ・・・くらいは、う、嬉しい・・・?とか思ったり思わなかったり・・・?」


いっそ記憶ごと消してほしいくらいだな・・・。


「・・・い、つき――」

俺は、返事を聞く前に咄嗟に定位置に戻り、背を向けて寝転ぶ。
そして手をゴソゴソと手探り状態で動かすと、ありったけの布団とタオルケットを巻き込んで被りこんだ。

恥ずかしいを通り越して消えてしまいたいレベルだ・・・!

顔を見るなんて絶対無理で、今クロと話すことさえ難易度が高すぎる。

また口走ってしまった、口走ってしまったっ・・・。

顔が熱い、動悸も荒い、目の前がぼやける。
こんなの初めてだ――。

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