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執事はお嫌いですか?
第6章 主人と執事は翻弄し、進む
「――斎、何でそっち向いてるの」
「別に何だっていいだろ」
「なんか怒ってるし――

逃げるが勝ちっていうの、ずるいよ」

ギシ。とベットが軋む音が遠くから聞こえると、上からの重さを感じた。
気づいた時には目の前にクロの顔が。

「俺の分の布団も取ってどうしたいの?」

剥ぎ取った布団を持って、俺に詰め寄ってくる。

目を逸らすと、ほのかに染まった耳が見えた。

「クロ――」

揺れる視界でゆっくりと間近にあるクロの赤面顔を捉えた。

さっきみたいに不思議な感覚で胸がドクドクしている。
しかも比べられないほど速い。

今日は、なんでこんなにも揺れて、熱くて、せわしないんだろう?

「急にらしくない事ばっかり言うし、お風呂の時からちょっと変だよ?」

じりじりと詰めてくるクロ。
それを阻止しようと肩を押す俺。

他人事のような口振り。

誰のせいで・・・
誰のせいで・・・

こんなにも変な気分になってると・・・!

「お、お前が言うな~ッ!」

怒りを込め、俺は手元にあった枕を勢いよく投げつける。

どうせ避けるだろう。

だが、クロはわざと避けずに顔に食らった。

「!」

「うっ」

ボフっと柔らかい音が鳴る。

「え、わ、バカっ!」

まさか本当に食らうとは思っていなかったので、俺は起き上がって、咄嗟にクロの頬を確認する。

「な!なんで避けないんだよっ!
結構痛かっただろ・・・ケガしてたら――」

ぺたぺた触って傷が無いことに一先ず安心する。

「ごめん・・・

鼻とか痛くないか?
は、鼻血とか・・・出てないし、大丈夫だよな・・・」
「ん・・・」

無意識のうちに縮まる距離。

「本当に酔ってるんじゃないか?」
「どうだろうね・・・わからない」

クロは他人事のように首をかしげ、頬を緩ました。

「なんだそれは――」

釣られて俺も笑う。


「――やっと緊張解けた」
「ん?」

クロの言葉にキョトンとする。

「何がだ?」
「お風呂の出来事から、斎、ずっとカチコチだったでしょ・・・?
やっぱり駄目だったかなって思ってたから・・・」

クロはタオルケットを俺の肩にかけながら、「風邪引かないように」と一言。

そういうことか・・・。

あれは俺が単に意識しすぎというか――。
かなり自意識過剰だった・・・気がする。

――かなり恥ずかしい奴って思われたかも。
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