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執事はお嫌いですか?
第2章 主人の執事は先輩です
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クロと徒歩で登校して約30分。
校門の時計を見ると、いつの間にか入学式が始まる時間へ一刻と迫っていた。

クロはなぜか一つ重いため息をつくと、人通りの少ないところへ俺の手を引いていった。
そして、しゃがんでは俺のネクタイを調え始め、髪を撫でる。

「斎様。今から入学式なのですぐに体育館に行ってください。
遅れたら色々と目を付けられてしまうので気をつけてください。それと先生や生徒に家のことで何か訊かれても気にしないで大丈夫です。

あとは―――」
「クロ。そんなに心配しなくても、わかってる」
「私は斎様のことが心配でならないのですが・・・」

メガネから覗く瞳に影を作る。
心から心配そうな顔。

あ~・・・もう。

「――本当に大丈夫だ。小学生じゃないんだし、それに俺は男だ。

言われた通り体育館には行くし、目も付けられない様にする。
家のことは何言われても気にしないし、第一慣れている。

・・・執事にそんなに心配されても困るだけッ――」

首筋にクロの髪が触れ、くすぐったく感じた時には俺は既にクロの胸の中で。
言い終わらないうちに、俺はクロに抱きしめられていた。

わっわっ・・・!

「斎様・・・」
「クロ・・・!人が見たらどうするんだ・・・!離せっ・・・」

急激なスピードで火照る顔を知られたくなくて、俺は咄嗟に叫んだ。
名残惜しそうにクロは手を引っ込め、俺は一息小さく吐くと心を落ち着かせた。

出会ったときからクロは何をしてくるかまったく読めない・・・。
おかげで心臓がずっと高鳴りっぱなしだ。

「クロ、もう突然そうやって恥ずかしいことをしてくるのはやめろ・・・。
スキンシップが多すぎるぞ・・・?」
「なぜですか?」

不思議そうに瞬きを一つ。
口元は若干緩んでる。

気付いていないとでも思っているのか?
絶対わかってて訊いてるよな・・・。

クロとこうやっても勝てないのは、これも出会ったときから今日までで学んだことだ。
抵抗する分だけ恥ずかしい思いをするのはこっちだということを。

「もう・・・いい。
入学式あるし体育館行く。
じゃあ、また放課後」
「はい。鞄を忘れないよう。
気を付けていってらっしゃいませ―――」

クロは丁寧にお辞儀をして、俺が人混みの中に消えるまで見守っていた。

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